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  • 未生流東重甫

「華道玄解」 荒木白鳳著 閲覧 25

「華道玄解」 荒木白鳳著 閲覧25 2022年5月のコラム


五月晴れという言葉がありますが、まさにその言葉通り、心も体も開放感に満ちあふれた感じがします。山里の木々も今が一番活き活きとした時期であり、清々しい緑の世界を演出してくれます。木々にとって、この季節こそが年の始まりなのかもしれません。

 春になると、まず美しい花を咲かせて目を楽しませてくれる花木も、木々にとっては卒業花展のようなものではないでしょうか。1年の集大成を華やかに終え、新しい年を迎える木々にとってまさに新春を迎えて新緑として今年の一歩を踏み出します。

 何においても進むときは美しいものです。五行でいう木・火・土・金・水の「木」は、青春の時であり、動き進むときである今程おおらかな景色にしてくれることはありません。俳句の季語にある「山笑う」とは良くいったもので、林間、山道を走ってみると、新緑が包み込んでくれる心地良さに酔うような気がします。

 やはり花も美しく、紅葉も心騒ぐ美しさがありますが、新緑の持つおおらかさには勝てません。人の心を騒がせる程の美はないですが、生きている姿は四季の木々の姿の中で一番美しいと思います。

 お花見や紅葉狩りも良いですが、植物にとっての春であり新春を祝う時期はいつなのか、とこの季節のタイミングで心をはせてみてはいかがでしょうか。


 さて、前回までは「華道玄解」の『五行の五囑と解説』として、木火土金水それぞれに属する部類を読み進めました。今月は『五行の所属十二種の應用』に進みます。


先聖の擧げる五行の所屬十二種は皆俱に萬物養正の基礎を知らしむる便法なり。宇宙の生物之れに倚って或は其体を養ひ。或は其性を養ふ、華道も亦此の十二種を以て人類の養に便ならしめ。且つ人類の生存に必要なる物を養ふ便法となす、今其の種類に應じて主要なる者を類別して左に擧ぐ


方。星。卦。神。時。數の如きは      地形家宅の養ひ(保存)の爲にあぐる

氣。卦。色。五。常。時。神の如きは     人類の性を養ふ(種類向上)の爲にあぐ

時。臟。味。色。音。方。數の如きは     人の体質を養ふ(保健)の爲にあぐ

神。時。卦。數。色。音の如きは      自然の寶器の養ひ(保存製作)の爲にあぐ

星。卦。色。五。常。時。味。數の如きは   草木禽獣虫魚の養ひの爲にあぐ

方は是れ法の根元なり。雨中に自然の物体顯るとも。

法定まらざれば。其用をなさず。法定まって用を調ふ。無極の中太陽(日)を標準として東西南北の方位を定む。是れ法の初めなり

星は天業の正しき行を示す。自然の作用なり。故に人類之れを敬すべものなり

色は萬氣の凝結して發露するものなり、是れに依て萬物盛衰の様を告ぐる自然の教へなり

氣は萬物の性情を。己個に倚て變化する眞里を知らしむる自然の作用なり

卦は天地の氣運を豫知。人倫の正法なり然れども人我の作意を混へず。唯天業補佐の意に順ひて超す。故に自然の大法に異ならず

人は五常の道に依て天業を補佐するを以て正道とし是れを眞人とす。故に五常の道は人類の要道とし。

亦治國の要道とし。世界存續の要道とす。故に巳れ(己れの間違いではかと思います)を護る道なり

時、は是れ自然の警告にして、宇宙の氣の循環を物に依て現す、自然の行動なり。人是れに随順して動すべき也。時を得ざれば萬法、其用を爲さず。開花冬眠自然の時なり。

宗教各派の興廢も自然の時なり。人情の變動も、自然の時なり。流行の變還も自然の時なり。人運の盛衰も自然の時なり。生死亦自然の時なり

神、は是宇宙の中核なり。萬物の統帥なり。萬物の高祖なり父母なり故に敬すべきなり

臟、は身体を維持する基礎なり。生命を臟する倉庫なり。

神は心に藏れ(魂は肝にかくれ(精は腎に藏れ(魄は肺にかくれ(意は脾に藏る

味、は生物の体質を支配する統帥なり。五味の調和にて身体の健康を支持す。五味の調和せざれば質の變化を起す故に發育を害す

數、は一に萬物生成を示し。亦萬物の氣運を支配し、生住異滅の理を現す。故に萬物の生時皆數の氣性を具す。卦象を求め運氣を測るに皆是の數を基礎とす

音、は一に生物の内性を支配し。亦萬物の内相を具す故に人類此の音相に倚て諸物の性を推察する便法として又文學の基礎とし。声學の便法とす。凡宇宙間の物体にして「數と音」の具備せざるものなし。故に數音二物は萬物形成の原素なり命脈なり


 以上が『五行所属十二種の應用』です。細やかに思いを説明してくれているようで、説こうとしていることがわかりやすい気がします。


 ここまで学ぶ必要があるかどうかと考えながら進めて参りましたが、流儀、流派の存続は思想や時代相応の教育があればこそではないかと思います。

「華道玄解」に説かれているところを少しでも感じることが出来るなら、次の時代に何を残せば良いのかも解ってくるのではと思います。未生流200年の歴史が、次の200年の歴史を生む流派であって欲しいものです。6月のコラムでは華道玄解「養の巻參考資料」の『人類養の基礎』へと進みたく思います。

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