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  • 未生流東重甫

5月の花 :文目(アヤメ)


2018年5月の花 <文目(あやめ)>

過ぎ行く季節があまりにも早く、今年もすでに1年の3分の1が過ぎてしまいました。今年は例年に比べて気候と季節の移り行きが少々ずれている気がしますが、毎年「特に今年は!」と思っているような気もします。

近所である長岡天神の霧島躑躅(きりしまつつじ)は美しく、知る人ぞ知る場所です。昔の季節感なのでしょうか、5月の連休に咲き誇ると思い込んでいるところがあるのですがここ最近は連休の時期では遅すぎるくらいです。南面は咲き終わり、北面は盛りを過ぎ始めています。今年は4月の下旬に散歩に出掛けてみましたが、すでに花盛りは過ぎていて、悲しくも北面でさえ燃え盛るような美しさとは程遠いものでした。今年の桜の開花や気候からすれば10日くらい早いのが当たり前なのかもしれません。

5月は24節気でいうと「初夏」であり、4月節の立夏、4月中の小満にあたります。なお、小満とは、「万物次第に長じて天地に満ち始める」という意味で、真夏日を何日も感じてからの立夏であり、小満は、季節感とはうらはらで今からが立夏?というものです。

5月になると牡丹(ぼたん)や躑躅(つつじ)、山吹、花水木も過ぎ、菖蒲(しょうぶ)や文目(あやめ)、杜若(かきつばた)、卯の花(うのはな)、空木(うつぎ)、紫陽花(あじさい)と涼しげな花が多く咲きます。その中から今月は文目を選んでみました。いずれアヤメかカキツバタと美しさを競う花ですが、生育する環境は異なります。

<文目>

文目は、被子植物、単子葉類、キジカクシ目、アヤメ科、アヤメ属(iris)、アヤメに分類され、学名をIris sannguinea、英名はSiberian irisです。別名には、はなあやめ、水菖蒲、うまばな、かげつ、かげつばた、かっこ、かっこう、かっこうばな、しうどめ、そどめまとり、菖花、蘭蓀、乙女花、あやめぐさ、さうぶ、ふくき草、菖蒲、昌陽、水劔草等があります。

なお、万葉集に「あやめぐさ」として12首あります。この「あやめぐさ」は

ほととぎす 待てど来鳴かず 菖蒲草玉に 貫く日を いまだ遠みか 大伴家持(巻8-1490)

と詠まれており、他の歌も同様に今でいう真菖蒲のことで、文目ではありません。

文目と花菖蒲と杜若を混同されていたり、見分けられなかったりという声をしばしば耳にしますが、人には十人十色の個性があるように草花も同様にそれぞれの個性をもっています。この3種は遠目で見ても生育する場所や花の大きさ等、違いは解りやすいものです。特に葉の質感が多いに異なります。

花菖蒲は男性に見立て、杜若と文目は美しい女性にたとえられます。花自体もそうですが、花菖蒲の葉は硬くしっかりと筋が通り折れやすいのに対して杜若は菖蒲の葉に似た姿をしていますが葉脈も定かでなく風になびき折れにくく、文目は他に比べ細く少し捻じれて伸びる葉が風になびきます。

歴然とした違いの物3種です。生育場所、花そして葉も見てほしいものです。

文目は5~7月に高さ30~60cmの茎に2~3個の花を付けます。外花被片の基部に虎斑とよばれる黄橙色の斑紋と紫色の網目模様が目立ち、この基部が「文(綾)目」であり、文目の名前である由来します。

文目は、北海道から九州までと、朝鮮半島、中国東北部、シベリアに広く分布します。ヨーロッパでは赤紫色と白色の品種が主に作出されており、文目の様に草地に生える細型のアヤメ属はコアヤメ(I,siberica)に代表されるシベリア・アイリスに分類されます。

菖蒲文目杜若とよく言いますが、これは、菖蒲は葉より花を高く、杜若は葉より低く、文目は葉と同じくらいの高さに咲かせるところからきており、花の見分けに便利な言葉です。

<いけばなとアヤメ>

いける花は、新花の場合は数多く遣うより1輪、1葉の姿を美しく表現したいものです。

伝承の花でも菖蒲や杜若の様に凛とした姿を求めず、しおらしげにいけるとすることが多いです。生花では葉を組み直すことが難しいので形の良いものをそのまま体、用、留添えと配し、花を適当に配して格を取ります。一輪、二輪といけるより数多くいけて生育の姿を写しみる方が似合うようです。

photo by kazusan on Wikipedia

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