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2018年3月のコラム <陰陽五行思想といけばな(未生流)>


2018年 3月のコラム <陰陽五行思想といけばな(未生流)>

 京都の三大祭から始まり、五節句、24節気、未生流の伝書の四季祝日の花等から抜粋したものや器取扱い、寄せ筒三巻・五巻をテーマにホームページ開設から6年に渡って年間テーマコラムを進めてきましたが、今年のテーマは日本の文化そのものとでもいえそうな題材で十干十二支など、特に興味深い話等で進めていきます。

初回の今月は、未生流いけばなの思想の根源である「陰陽五行」といけばなについて述べていきます。なお、こちらは2012年にウィーン大学哲学部で講演致しました内容とも重複していますので、講演レポートも参考にして頂けると良いかと思います。

未生流は、江戸時代後期西暦1807年頃未生斎一甫によって当時の首都・江戸ではなく、商業の街・大阪で創流され今に受け継がれてきました。当時、一甫は神教・仏教・儒教の三道に精通し、陰陽五行説・三才説を紐解き、いけばなの「形」を立花に対して生花として確立させ、その名を世に知らしめることとなります。

いけばなといえども、その形を成す上において、日本のその時代の文化を大いに反映されたものです。

日本の歴史の中で、いけばなの「形」が成立したのは奈良時代(8世紀頃)ともそれ以降ともいわれており、正確な時期は定かではありませんが、宗教や仏教での供花(おそなえ花)に起源を発しているといわれています。そして鎌倉時代(12~14世紀)にかけて、その当時の中国や朝鮮から伝来した文化・思想を取り入れ、いけばなの形を確かなものにしていきます。続いて室町時代(15~16世紀)には、立花としての様式が定められ、このいけばなは仏様にお供えする花としてだけではなく、いけばな芸術の文化として貴族や上流社会で栄えていきました。その後の安土桃山時代には、茶の湯の花としてのいけばながいけられており、立花の様式から一般民の花として親しまれるようになったのが前述のとおり江戸時代(16~19世紀)です。江戸中期である1716年頃には新しいいけばなとして生花がその様式を調えはじめ、1750年に仏花である立花に対し、町民の花ともいえる生花やなげ入れの様式が完成しています。この様式の完成から50年余りで「未生流」が創流したことになります。

一甫の創流の後、未生流二世家元未生斎広甫が流派の真意についての伝書をまとめ、花図書なども多く刊行され現在の未生流の礎となります。そして八世家元未生斎康甫の時代、1930年に伝承の花「格花」に加え、現代花である「新花」が確立され、1948年に前衛挿花(現在の造形作品)という名称が初めて花展に遣われました。第二次世界大戦後のいけばな界は、そのブームに乗り多くの流派を生み出すことになり、華道名流展や協会展などが東京大阪を始め多くの百貨店などで開催され、多くの流派が独自の思想的要素や、いけばなの形を確立して門葉に伝授しています。つまりは未生流の陰陽和合、虚実等分、天地人三才和合、陰陽五行等を取り入れた流派の真意がいけばな家に認められ大いに広められた時代です。

現在は単純に形にいけることを「いけばな」としているところも多く、いけばなの本来の意義を考える時間が少なくなりました。特に格花は、本来は陰陽五行や三才、そして元をたどれば儒学も含めて学びが必要なのですが、いけることやいける形、そして美しさばかりを求めてしまい、いわゆる手段(花を生けること)が目的となってしまいがちです。いける技術を習得するためにはそれに伴う教養も必要ですので、いけばなを通じてこの教養を身につけることも意識することが重要です。

今の時代にそぐう考え方ではないかもしれませんが、今なお日本の文化や生活に奥深く関わりを持つ「陰陽五行」の意味を来月から考えてみたく思います。

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