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未生流東重甫

11月の花:柊(ヒイラギ)


2017年11月の花 <柊(ひいらぎ)とセイヨウヒイラギ>

やっと秋を楽しむことが出来たと思った矢先、すぐに冬装備の季節がやってきました。生け花の世界では、秋を感じさせてくれる機会は必然的に多いものの、日常の生活ではなかなか出会う機会も時間も与えて頂けません。ゆっくり味わいたいものがたくさんあるのですが、今年はどれくらいの秋を頂いたのか記憶にないほどです。

11月になると紅葉の季節、そして暦の上ではとうとう冬です。紅葉狩りにコスモス街道…と確かに見る価値はあるのではないかと思うものの、盛んに集まる人の山でうんざりしてしまいます。心静かに季節を楽しみ、過ぎる季節を思うことは難しいようです。

過ぎ行く秋を惜しんでいるともうクリスマスの季節です。どこもかしこもクリスマス一色、日本はお買いもの商戦まっただ中、いわゆる年中行事の1つでお祭り状態です。このようなにぎやかな季節になりますが、日本古来の風習と似た考えで植物を飾る風習があり、さらにそのクリスマスに飾る花と日本の節分に飾る花との名前が似ています。実は全く別の植物ですので、詳細をご紹介します。

<柊(ひいらぎ)>

柊(疼木)は、被子植物門、双子葉類、キク類、シソ目、モクセイ科、モクセイ属、ヒイラギ種に分類される常緑小高木で、学名をOsumanthus heterophyllus、英名にはchinese-hollyやfalse holly hiiragi等があります。和名の柊(ひいらぎ)のひいら(疼)は、ひいらぐひりひり痛む)の意味からきています。

高さ3mから10m1になり、葉は対生し、3~5㎝の楕円形で硬く、葉縁に1~4対の棘の鋸葉を持ちます。老樹になると全縁のものが多い。花は葉腋に白い4つに分かれた小さな花を束生し、良い香りがします。雌雄異株で核果は楕円形、翌年の6~7月ごろ黒紫色に熟します。本州、四国の暖温帯に普通に見られますが、九州ではまばらで、西表島と台湾の中央山脈にも分布します。

庭木として良く植えられているほか、節分にこの小枝を門口にさして邪気の侵入を防ぐ民俗が各地にあります。材は重くて堅く、かつ緻密で、弥生時代末から古墳時代初頭にヒイラギで作られた工具が千葉県茂原市の国府遺跡から出土しています。現在では、算盤玉や櫛、椀、印材、ろくろ細工などに用いられています。

<いけばなとヒイラギ>

革質の葉は、スプレーで金や銀、様々な色に染める事が出来、染めた色も映えます。刺がある事もあり、まれに応合いに用いることはあってもあまり格花でいけることはなく、新花や造形手法の生け花に用いられることが多いです。刺のある葉の方が特徴としてとらえやすいので、表現できることも多くあります。

取り合わせる花材は限られるかもしれませんが、それだけに楽しめる花材ではあります。

<西洋柊(せいようひいらぎ)>

西洋柊は、被子植物門、双子葉植物網、バラ亜網、ニシキギ目、モチノキ科、モチノキ属、セイヨウヒイラギ種に分類される常緑小高木です。学名はIlex aquifolium、英名にはEuropean holly、English hollyがあります。

西洋柊は、ヤドリギと並んでヨーロッパでクリスマスに欠かせない飾りです。濃緑色の光沢ある葉には鋭いとげ状の鋸歯があり、真っ赤な果実との鮮やかな対比が美しいものです。

ヨーロッパでは聖なる木であり、古代ローマ時代にも冬至前後に催された農神祭(サトゥルナリア)にこの木を供えていたことがキリスト教にとり入れられたといわれています。

高さは6m程で、葉の長さは5~12cm、幅2~cmになります。生育すると葉のとげは少なくなり、葉先は尖るが縁は全縁となる。雌雄異株、果実は6~10mmの核果で赤く熟します。 イラン以西、ヨーロッパと北アフリカに分布し、耐寒性があり、生け垣としても利用されています。樹皮からは鳥もちが採れる。なお、西洋柊が分布しない北アメリカでは、形態のよく似たアメリカヒイラギをクリスマスの飾りに用いますが、葉はやや薄く、木はずっと高くなり30mにも達するものがあります。

他に、中国と朝鮮半島南部に分布するヒイラギモチや日本にはアマミヒイラギモチがありますが、これは奄美大島の湯湾岳山頂付近にだけ自生する固有種です。2~4mの常緑低木で葉は小さく、西洋柊と同様、老木になるととげが無くなります。盆栽などにアマミヒイラギ、ヒメヒイラギの名で流通していますが、乱獲によって絶滅危惧種となっています。

<いけばなと西洋柊>

欧米ではリースなどにして扉や室内の壁に飾り魔除けにします。この習慣にあやかり、クリスマスの花材の1つとして用いることが多いです。

クリスマスを表現する場合、色を意識することが多く、赤、緑、白の3種を遣うとクリスマスを表現することは容易です。これに黄色を加えて色を楽しむのも良いかと思います。

また、日本のお正月の花もやはりこの3色をベースにいけることが多く、これにさらに金や銀が加わります。この時期に用いる花材としては都合のいい色具合です。

いけばな、特に格花では、その花の意味を考えていけることが常ですが、新花はイメージを色や形に置き換えて表現することが出来ます。

「こんな使い方?」「こんな花は?」と勝手な制約はもったいない気がします。思い切って楽しむ事が大切です。

photo by Juni on Flickr

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