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  • 未生流東重甫

2019年8月のコラム 住空間の花4


2019年8月のコラム 住空間の花4

今年は土用の丑の日頃から長かった梅雨もやっと明け、本格的な夏を迎えました。

7月は七夕の節句や中元(三元(上元・中元・下元)の1つ)、海の日、土用の丑などの行事が多いですが、京都でも7月の30日間は日本三大祭りに挙げられる祇園祭が催されます。宵々山、宵山、そしてメインの鉾や山の巡行が17日に行われ、最近は後の祭りである24日も盛大に残り半分の鉾や山の巡行があります。また、大阪では天神祭の宵宮が24日、本宮が25日に催されて祭り一色の中、家々には檜扇の格花が飾られ雰囲気を盛り上げています。

8月に入ると三朔日(三朔日(一月六月八月の一日);江戸時代の式日)の1つである八朔(はっさく)から始まり、七夕の節句(仙台等8月7日頃に行われる地方もあります)そして立秋、山の日、お盆、地蔵盆などの行事が行われます。ちなみに未生流の伝書には、「四季祝日の花の心得」として八朔に挿ける花の説明があります。

近年は摂氏35度以上の日が続くことがあり、部屋に飾る花も少し可哀そうな気がしますが、植物の役割はこの時期大切なものです。暑い日差しを避けてやっと家に辿り着いたときや、お客様の来訪時に安らげるような空間創りをされているでしょうか。大袈裟に飾る花では褒める言葉を探すことになります。やはり自然に溶け込むような花にしなくては心安らぐことは出来ません。気付いては頂けなくても、ほっと安らげる空間づくりが、「おもてなし」の最上ではないかと思います。

昨年10月から始めました「住空間の花」は、部屋に飾る事でやすらぎ空間を演出してくれると同時に、一輪一枝の美しさや面白さは勿論、その植物の本質までも感じる事が出来るようになります。花を飾る習慣は、奈良時代ともそれ以前ともいわれますが、町民が花を飾るようになったのは江戸時代になってからでしょう。花を飾って宴を催す、一人楽しむ、来訪者を快く迎える為の心遣いと色んな場面で用いられた心づくしです。

いけばなでは花との会話を意識しますが、昨今のいけばなは自分との闘いの様なものになっています。いけばなは自分を飾らず、自然体の中で花と向き合うことから始まります。これにはまずその花を知ることが望まれます。〇〇科△△属と云った知識は今簡単に知る事が出来ますが、花に向き合い花との対話を試みる時間はなかなか持てないものです。

1度花と向き合い、花の心を覗いてみましょう。きっと心和らぐと思います。花をいける人自身が和らぎを覚え、初めて見る人を始めだれもが感じて頂ける花になります。お稽古の残り花を利用して、どのような花材でも活かしきれればきっと生活空間の中で場を和ませてくれます。形を追うたけのいけばなだけでなく、今一度花材と向き合ってみてはいかがでしょうか。

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