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  • 未生流東重甫

2017年3月のコラム:三巻筒 太極(たいきょく)


2017年3月のコラム <三巻筒 太極(たいきょく)>

 花器には、用途や形に応じて様々な呼び方があります。広口や水盤のように背丈の低いものを据物花器、対して寸渡(ずんど)のように幅に比べて背丈のあるものを置き花器、背丈も幅もあるものは壺と呼びます。 未生流では、置き花器と据物それぞれで基本的な花の大きさが決められています。 丸い水盤や小判型の馬盥のような花器の場合、高さは器の円周の3分の2、四角の広口や水盤は差し渡しの3倍(横幅の2.1倍)が基本です。

「伝書三才の巻」の花姿花器相応の心得でも次のように花の寸尺の説明がされています。

“置き花器の花は、器の高さ二倍より少し高く挿ける。(中略)据物はさし渡しの三倍に挿ける。又花の丈高くしてうつる事あり、低くして応づる事あり。(以下略)”

これは、背丈のある器の場合は、花は高さの2倍強~2.5倍を目安にすることを意味しています。伝書では2倍余りと書いてあることもあるのですが、最近は2.5倍でいけるため実際は差があることになります。

また、伝書に従うと、寸渡型の花器の場合は花の高さは花器の長さの2倍余りを基本と考えますが、壁や柱に器を掛けると1.5倍が基本の大きさになります。また、二重切や三重切の筒、や寄せ筒については細やかに説明がありませんが、花材と器とのバランスを考えて花の高さ、長さを決めます。  なお、未生流の宝器の1つである寸渡に花をいける場合、一般的な稽古用に作られている陶器の寸渡では花の寸尺は必然的に異なります。器とのバランスをよく考えていけたいものです。また、今年のテーマである「三巻筒」にいける場合の花の寸尺も細やかに説明されていることはありません。器と花材とのバランスを理解した上でいけるべきだと思いますが、参考までに私は三巻筒の長さの合計(1500mm)の1.5倍程度を目安としていけています。

<三巻筒 太極> 太極とは、万物の根源であり、宇宙の本体で天地未開の象(天地が形成される前で清濁の分かれない物事の区別がはっきりしない状態)のことです。未だ天地が別れず混沌としているが、今まさに天地が明らかになろうとしている時期と考えられます。 また、太極とは神秘森厳の姿で、いける花材も老松など、1種で気品のあるものがよいとされています。  なお、三巻の置き方は、奥から長さの長い順に一の筒、二の筒、三の筒として縦に並べます。 挿け方は、一の筒に小さく竪姿を三才格にいけます。これは、この花姿は小さいが主体となるもので正しい姿で簡素にいけます。続いて、二の筒に一の筒とは反対の花姿(一の筒が客位なら反対の主位)で用をあまり張り出さず、大きく真に近い姿で三才格にいけます。これが基本ですので、意味合いから流しなど曲挿けにしない方がいいようです。最後に三の筒は二の筒の竪姿とは反対の花姿(二の筒が主位なら客位)で横姿又は半横姿をいけますが、あまり大きく張り出さないように注意が必要です

挿け上がった花姿全体としてあまり大きくなく、正しい花姿で荘重な花にします。三巻筒の中でも大切な置き方ですので、意味深長に取り扱ってください。

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