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未生流東重甫

花器花姿相応の心得


2016年11月 今月のコラム<花器花姿相応の心得>

例年では初夏から夏にかけて多く発生する台風が、今年は暦の上では秋となってから多数日本に接近・上陸をする異例の事態となっています。その影響なのでしょうか、まだまだ日中は夏日のような気温が続いていますが、ようやく朝晩の冷え込みに秋らしさを感じるようになってきました。朝晩との寒暖差で体調を崩すことも多い季節ですので注意したいものです。

さて、先月までは花器についてご説明をいたしましたが、今月はその花器にふさわしい生け花をいけるための花姿と器との釣り合いについて、伝書を参考にご紹介します。

伝書三才の巻に、以下の説明があります。

置花器の花は、器の高さ二倍より少し高く挿ける。即ち体割の法*なり、口傳。

据物はそのさし渡し三倍に挿ける。又花の丈高くしてうつる事あり、低くして応ずる事あり。さて根じまりの程は置花器ならば口のさし渡しだけ枝葉なくしめる。据物ならばさし渡しの三分の一だけしめる。但し根じまりも用の枝の添う処も右の寸法より少し高き方はよろし。

ここでは器の形からの花姿の大きさを説明していますが、器の材質(竹、陶、銅、木製など)によって釣り合いのとれる寸法は変化します。また、器と釣り合いのとれた花姿の寸法は、花器の材質と挿ける花の種類で変化しますので、よくよく吟味する必要があります。

置花器の花姿の寸法は、2倍より少し高く挿けるとありますが、「挿花百錬」や「挿花教示辧」には2.5倍と定められており、現在も置き花器は高さの2.5倍を基本にいけています。据物花器は、「挿花教示辧」では差し渡しの2.5倍に対して、「挿花百錬」では差し渡しの3倍です。花の寸尺が短い場合は、2株、3株と株を増やし、その底辺の合計が差し渡しの3倍になるようにします。

器の力量感と花材の関係を吟味しながら、株を増やして釣り合いをとる事も必要です。杜若の八つ橋の景色や七夕の景色挿け、井出の玉川の景色など株分けで挿ける場合、花ばかりに気を取られ器との釣り合いを考えていないような作品をたまにお見かけすることがあります。意味があり美しければ良いという人もいますが、基本があっての格花である以上、わきまえるところはわきまえる必要があります。個展や花展での美への挑戦は、一線を越えることもあるかと思いますが、基本に立ち返ることも大切です。

丸い花器や馬盥のように楕円形の据物花器は、体割の法に基づき器の周りの寸法3 分の2を花の寸尺に定められています。

寸渡のような置き花器を掛けて挿ける場合は、器の高さの1.5倍の大きさが目安になります。基本なら置き花器とする二重や三重、五重のような重ね切りの器も太さや切り口の意味をとらえ、それに基づいていけます。

寄せ筒の場合、1.5倍程度が適しているようですが、花材によるところもあります。まずは釣り合いを考え、観る方を圧倒するのではなく、安らぐ花にしたいものです。

このような目を養うには日ごろの稽古から始まります。寸法通りに切ると、切ってしまったが最後、やり直しが出来ないからと大きめに切る人もいますが、花材を触る稽古は出来ても、感性を養う稽古にはなりません。

日々稽古です!

*:“人体にとりては膝にて折、腰にて折、此の三ッをもって三段とす、膝より下までの一分を花入れの寸法とし、残る二分を花の寸尺とし。(以下略)” と挿花百錬に説明があります。

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