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  • 未生流東重甫

二重三重の花器いけ方の心得


2016年6月 今月のコラム<二重三重の花器いけ方の心得>

今年2月からのテーマコラムでは、未生流の宝器である七種竹花器の意味をご紹介してきましたが、七種全て網羅しましたので今月からは伝書三才の巻から花展などでは必ず目にするお花道具を抜粋し、使い方やその心得についてお話ししていきます。

未生流を学んでおられる方はもちろんのこと、多くの方がいけばなを見る機会があると思います。物を知ることはより興味深く感じることにつながります。形だけでなく意味を感じながら観ることがいけばなの大切な美への誘いです。  未生流は元来、仏花や供花ではなく、町民の花として一般庶民の床の間を中心に部屋飾りとして広く親しまれたきた歴史があります。このような背景をふまえながら、花器や花留めをそれぞれご説明いたします。

七種の花器から基本の寸渡(ずんど)は、基本的には置いて使い、竪姿(たちすがた)をいけます。基本の花の寸尺は花器の高さの2 倍以上~2.5倍程度にいけます。床の間に垂撥などで掛けた場合は花器の長さの1.5倍が基本です。

以上が基本の長さですが、実際は花材により全体の見た目のバランスを考えて長さを決めます。 松や栂(つが)などは先端まで重量感がありますし、逆に金雀枝や利休梅は先端が軽やかに感じますので、いける際にそれぞれのバランスによりちょうど良い長さを決めます。

<二重花器> 伝書三才の巻に二重花器について次の説明があります。

二重切の取り扱いは、置いて遣う時は、上口に竪姿を挿け、下口に横姿を挿けるなり。掛けて遣う時は上口横姿、下口竪姿を挿ける。尤も上木物にて下草物よろし。上口の用の枝、下筒の下の切口より下りたる時は、下口の体の枝、上口の上の切口より高く出す、これ定法なり。右は正面掛けの挿け方なり。上口の花明り口へ出す。また床柱に掛けて挿ける時は、花器の横よりみる。されば下口に大なる花は挿けがたし。故にたとえ上口の花十分下りても、下口の花高く出さずして苦しからず。先ず応合体(あしらいてい)の挿け方にてよろし

図にしてみますとよりわかりやすくなるかと思いますので、是非挑戦してみてください。 掛けて使う花材はあまり重々しい花材はふさわしくありません。このように、花材と花器は心して選ぶ必要があります。

<三重花器> 伝書三才の巻に三重花器について次の説明があります。

三重切は置いても掛けても上口へ横姿を挿けて明り口へ出す。中口竪姿、下口また横姿を挿ける。尤も上客位ならば中主位、下又客位、これ定法なり。併し、右にては同じ方へ上下の横姿出る故、下口に大いなる花挿けがたし。器によりては、下口に大きなる花挿けたき事あり、然る時は上の横姿客位ならば中は正面へ出し応合体に小じまりに挿け、下に大きく竪姿を主位に挿ける。この挿け方面白し。

1 つの器に数種類の花材をいける場合も花材選びに注意が必要です。三重切にもなりますと上口から山里水の順位で選ぶのはもちろんのこと、色の順位(白、紫、黄、紅、赤)も考える必要があります。

花材選びについてですが、同じ山のものでも出生から順位があるので。まずはこの順位を間違わず、竹花器の切り口や太さなどをよく考えて、適した季節の花材を選びます。

切り口の変化で器自体も美しいものです、そこにいける花が器と和合することが基本です。花材を選ぶのはいけ手ですが、器や花材を活かすのもいけ手の大切な役目です。

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