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  • 未生流東重甫

5月の花:空木( ウツギ)


2016年5月 今月の花<空木(うつぎ)>

初春から色んな花が咲き誇り、特に3 月からは南方より桜が咲きお花見気分に浸る姿が報道され始めます。今年は特に外国の方達の姿も多いようで、京都の名所も半数が諸外国からの訪問客のような光景です。私事ではありますが、花展出瓶のため4日程東京に滞在しましたが、都心にもかかわらず花見所が多いことに驚きました。  桜の種類は沢山あり、里桜と山桜、一重と八重、そして花の色も白色、桜色、桃色、朱色、緑色、黄色など、固有の名前を挙げるときりがないほどです。そしてこの時期は私の住む京都の長岡京市もお花見と筍で大賑わいです。桜に始まり、長岡天神の霧島躑躅(つつじ)、時期を同じくして乙訓寺(おとくにでら)の牡丹など、楽しみが多くあります。 賑やかな花が咲き終わると、少し落ち着いた色の花木に代わっていきます。空木(うつぎ)や杜若(かきつばた)、紫陽花(あじさい)などの他、水辺にも白色からブルー系、少し落ち着いたピンク系の花が咲きます。今月はこの中から、空木(うつぎ)を紹介します。

空木は、被子植物、真正双子葉類、キク類、ミズキ目、アジサイ科、ウツギ属に分類される落葉低木で、英名を、別名「卯の花」です。卯の花の他にもあなつぼ、うつげ、かきみぐさ、くちべにうつぎ、くねうつぎ、しおみうつぎ、しろうのはな、なつゆきぐさ、ゆきみぐさ、はつみぐさ、はめき、ひきだら、ひきだら、みちもとめぐさ、空豆木、雪花菜など多数の別名があります。 なお、空木の名前は、植物の資源性に着目した命名といえます。といいますのも茎は成長すると、その中心部の髄が消失して中空になる木が「空木」であり、油を燃やして明かりを取っていた時代には、木の髄は灯心として生活の必需品でありました。 樹高は2~4mで、よく分枝します。花期は5 ~7 月で枝先に多くの白い花を咲かせます。山肌にやさしい白っぽいかたまりを見つけて足を止めると大概空木の花が咲いています。

ウツギ属は50種以上あり、殆どが東アジアからヒマラヤに至る地域に分布しており、日本にはヒメウツギ、マルバウツギ、ウメウツギ、オオシマウツギ、ウラジロウツギ、ヤエヤマウツギ、バイカウツギの7種があります。この中でもバイカウツギ属は約65種あり、北半球の温帯に分布しています。バイカウツギは別名薩摩空木、近縁種に利休梅があります。

実はウツギの名は他の植物の名前にも使われています。我々がよく耳にするハコネウツギやニウツギはスイカズラ科、ノリウツギはユキノシタ科またはアジサイ科などに分類されます。分類に苦労の跡を感じさせられる植物の1つで、2,3の著書読んでも確かな事が言えないようです。

<いけばなと空木> 空木は、古くから詩歌や文学に好んで取り上げられた古典的な花です。季節の情緒あふれた花材で、房状についた小花を応合いに使ったり、掛け花器の横姿に遣うと情緒を醸し出せます。水あげは切り口を砕いたり、焼いたりするの通例ですが、今風の薬剤も効果はあります。 なお、万葉集に「うのはな」を詠んだ歌が24首あり、数ある万葉植物の中でも上位に位置づけられています。 いくつかご紹介しますので、いける際のイメージ作りの一助になればと思います。

“朝霧の 八重山超えて 霍公鳥(ほととぎす) 卯の花辺(はなへ)から 鳴きて越え来ぬ” (朝霧を超えて霍公鳥(ほととぎす)が鳴いて卯の花を越えて来ました)

“卯の花の 咲く月立ちぬ 霍公鳥(ほととぎす)来鳴き響(とよ)めよ 含(ふふ)みたりとも” (卯の花が咲く月がやってきました。霍公鳥よ、こちらに来て鳴いておくれ、まだ卯の花がつぼみのままでも)

“春されば 卯の花ぐたし※ 我が越えし 妹(いも)が垣間は 荒れにけるかも” (春がやってくると卯の花を傷めながら私が越えていった、あの娘が居た家の垣根は、今ではすっかり荒れ果ててしまいました。)

※うのはなぐたし(卯の花腐し):五月雨前にその走りとして降る長雨

photo by TANAKA Juuyoh on Flickr

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