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2月の花:山茱萸(サンシュユ)・満作(マンサク)

  • 未生流東重甫
  • 2016年2月13日
  • 読了時間: 3分

ホームページ開設以来、毎月の花のコラムを続けてきましたが、今年も引き続きその月の花を取り上げて季節を感じていこうと思います。

暖冬と予想されていた今冬でしたが、例年どおりの寒波襲来で暦どおりの寒い日が続いています。そんな寒い日の風に芳香を放つ梅を見つけると、いよいよ暦の上では春が近いことを感じ、梅がちらほら咲き始めると日差しがやけに温かく感じます。このちらほら咲く景色が梅本来の情感ではないでしょうか。咲き乱れる梅の景色を愛でるのも良いですが、一輪のぬくもりを感じたいものです。

梅が咲く時期になりますと、蝋梅が満開、木瓜に桜など咲く中で静かに咲き始めるのが山茱萸(さんしゅゆ)です。若い枝は上へ上へと伸びていきますが、その枝先にまで黄色い花を咲かせます。また、満作(まんさく)も同じ黄色い花を咲かせます。 何故か年の初めは黄色い花が多く咲くのを感じてしまうのですが、これも色素の少ない冬の景色でその黄色が惹きつけるからでしょうか。 今月はこの2つの花についてご紹介していきます。

山茱萸は、被子植物門、双子葉植物網、ミズキ目、ミズキ科、ミズキ属、サンシュユ種に分類されるの落葉樹で、学名をComus officinalis Sieb、別名に春黄金花(ハルコガネバナ)、アキサンゴ、ヤマグミなどがあります。 和名のさんしゅゆ由来は、山茱萸(やまぐみ)の音読みで、木一面に黄色い花をつけるところからハルコガネバナ(名付け親:牧野富太郎博士)、秋にはグミに似た真っ赤な実をつけるところからアキサンゴとも呼ばれます。実はグミとは異なり、渋くて食べられません。

日本では平安時代に名前は記録されていますが、江戸時代(1722年)に朝鮮経由で江戸小石川に薬用植物として渡来したのが最初とされています。その後観賞用として各地に分布しています。 乾燥させた果肉は生薬として使われ、強精剤・止血・解熱作用が認められており、現在も牛車腎気丸、八味地黄丸等の漢方薬に配合されています。

満作は、被子植物、真正双子葉類、ユキノシタ目、マンサク科、マンサク属、マンサク種に分類されるの落葉樹で、学名をHamamelis japonica Siebold 、英名はJapanese witch hazal、別名に万作、金縷梅があります。 和名の由来は、早春に花に先だって「まず咲く」性質に由来する説や、他の花に先駆け「まず咲く」、多数咲く花の様子が豊年満作の「満作」に通じているという説などがあります。 2月~3月に葉に先駆けて花が咲きます。この花は、紫紅色のがくが4枚、黄色い花弁が4枚で、初めは伊達巻状にくるまっていますが、開くと長さ2cmほどでねじれています。蒴果は2裂し、黒色で光沢のある種子を2個含みます。

ずいぶん前になりますが、梅で有名な京都宇治田原とお茶や油で有名な三重県月ヶ瀬に梅を見に行きました折、梅の木もさることながら満作の花に目を奪われました。 時期でもあり、いろんな種類の満作が咲いている中で、常盤万作だったかと思いますが紅紫色の花弁で静かに咲いている木を見つけました。満作の原種であるようなことをお話しされていましたが、日本の風土にぴったりで、ワビサビを感じる存在であったように記憶しています。 満作の花言葉は「幸福の再来」だそうですが、いつも幸せな人には必要ありませんね!

<いけばなと山茱萸・満作> いけばなに用いる場合、木肌や枝の動きに変化がないため、応合いの藪椿など使います。藪椿の光沢のある緑の葉と赤い花が、黄色い花を咲かせる山茱萸や満作によく合います。 双方とも朽ちた枝にはそれ自体が持つ風合いがあり、格花には欠かせない花木です。 山茱萸は特に枝が硬く、揉めは効きますが木肌が滑りやすく挿け難いものです。格花を挿ける場合、いろいろ注意するところがある花材です。硬さや木肌の特徴を捉え、伸びやかに挿けたいものです。

 
 
 

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