お正月の注連縄や鏡餅には必ず、時には門松にも用いられている歯朶(うらじろ)ですが、なぜ用いられているかといえば難しいものです。 伝書には、事始めの花として白梅に歯朶と紹介されています。そこで、今年が終わり一足早く新しい年を迎える日の花として今月は歯朶を紹介します。
シダ植物は歴史も古く、種類もヒカゲノカズラ、ワラビ、マツバラン、トクサ、ゼンマイ、タニワタリなどの種類に分類されます。歯朶はシダ植物門、シダ網、ウラジロ科、ウラジロ属、ウラジロ種に属するシダで、英名 Gleichenia japonica Spr、和名をウラジロといいます。なお、ウラジロ科は、フサシダ科と共に起源の古い原始的な科であるとされています。 地下茎は細くて強い為、大きな群落を造り易く、本州東北部以南に分布しています。海外ではアジアの熱帯域まで分布しており、何段にも葉を出し、時に10mに達するほどの大きさになります。 葉の表は艶のある深緑色ですが、裏は白い粉を拭いたように白っぽい緑で、歯朶の名はこれに由来します。二又に大きく分かれた葉身が垂れ下がり、この姿から古来シダといえばウラジロを意味していたようです。
長寿を意味する「齢垂れる(しだれる)」にかけて年始の祝いに用いられるようになったとも、裏が白い、つまり共に白髪が生えるまでと解釈されたともいわれています。ウラジロ科の葉軸は丈夫でしなやかなので、編んで壁材や篭などの工芸品に利用する事が分布域で広く見られます。
<いけばなと歯朶> 特徴のある葉の出方をしているので、その葉を利用してお正月の花をアレンジに使用することもあります。また、格花(流儀花)の四季祝日の花の心得に説明があり、「事始」の花に白梅と二種でいけます。 傘を広げたように、葉身は横に開いて出ますので特徴でもある裏の白っぽい所を見せていけるのは難しいですが、工夫して愉しんで頂きたいものです。 取り合わせは自由に、金柑の実やアンスリュウムの様に質感や形の違うものと合わせると楽に表現できます。
自然手法より一工夫加えた造形手法でいけたいものです。
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