2015年4月のコラム 元服(祝事の花の心得より)
今年は「伝書三才の巻」から項目を選んでお話しています。1月は婚礼の花、2月は節分、3月は新宅移徙の心得と進んできましたが、4月は「伝書三才の巻」の“祝事の花の心得”から「元服(げんぷく)」をお話します。
元服、と聞くと時代劇等を想像する方も多いかと思います。確かにかなり古い言葉ですが、奈良時代より男子の成人式の様なものとして旧来より行われてきました。室町時代以降は、11歳から17歳位(数え年で12歳~17歳)までに行われており、特に12歳頃が多かったようです。余談ですが、公家の女子の成人式は裳着(もぎ)と言います。
この元服はただの通過点ではありますが、大切な儀式の1つでもありました。元服の「元」は首(=頭)を、「服」は着用を意味しており、服を改め、子供の髪型を改めて大人の髪を結い、冠を付けることから、首服・加冠・初冠(ういこうぶり)・こうぶり、烏帽子着などと称しました。
家柄の違いで、前髪を落とし月代を剃って髻(もとどり)を結い、加冠や烏帽子を着けました。江戸時代には、公家など堂上家(清涼殿に上がれる家柄)を除き、武家や庶民の間では烏帽子も着けず、前髪を落として月代にするだけで済ませるようになりました。
なお、女子の成人式の儀式は、鎮漿付(かねつけ)という髪を結いあげて成人の印としました。女子は17歳で成人となり、多くはこの頃嫁いでいました。江戸時代以降は、女子も結婚と同時に元服と称して行い、また、未婚でも18歳位には行っていました。
現代は、男も女も20歳で向かえる成人式です。法的には20歳未満は未成年扱いとなっていますが、元服が行われていた頃の時代背景を考えてみればもう少し早い成人の日が来ても良いのではと思いますがいかがでしょうか。
<元服といけばな>
江戸時代の花図に幾つか見る事が出来ます。
広口(桐で作った水盤)に白玉椿を大きくいけ、株を分けて金丁花(沈丁花)が横姿でいけてあります。今一つは白玉椿を一種でいけています。
白玉椿は、祝事の花には欠かす事の出来ない花であり、八千代の玉椿として純白の意を解し、清く美しい姿が成長していく人の精神を感じさせます。
祝事の花として、実物は何にでも用います。実を結ぶ、いわゆる将来何につけ成功裡に終える、をもって祝福の花とします。松は常緑、竹は節度を保ち健やかに伸びる、梅は魁として芽が出ているもの、菊、芍薬、牡丹、万年青、太藺(ふとい)他、勢い強く芽が出ている花材が挙げられます。
今月の花ではこの中から芍薬を取り上げていますので参考にしてみてください。