• 未生流東重甫

12月の花:蝋梅(ロウバイ)


様々に織りなす錦絵のような景色も、過ぎてしまえば邪魔物のように忘れ去られます。春の桜もそうですが、良い時もやがて過ぎ去る、人社会の悲哀を感じます。ともあれ、冬眠する木々もあれば寒さに負けずと花を咲かせる木々も沢山あります。そんな中から、今月は厳寒の頃に春を思わせる様な芳香を放ち咲く花蝋梅(ろうばい)を紹介します。

蝋梅は、他の花に先立って12月頃から2月頃に黄色の可憐な花を咲かせる被子植物門双子葉植物網クスノキ目ロウバイ科ロウバイ属ロウバイ種に分類される落葉低木です。中国原産ですが、日本には17世紀初頭に朝鮮半島を経由して渡来し、現在は日本を含む温帯地域で広く栽培されています。学名をChimonanthus praecox、この属名は冬と花を意味するギリシャ語に由来しており、英名はWinter Sweet(ウインターローズ)といいます。なお、蝋梅の名は、中国で蝋梅の音読みです。この名は、花の色や光沢が、蜜蝋(みつろう)に似ていること、光沢のある梅に似た花弁、そして梅に先駆け芳香を放つところから臘月咲く梅で蝋梅と呼ばれたという説があります。

花言葉は、「慈愛心」「慈愛に満ちている人」「ゆかしさ」などがあります。

 花が大きい唐蝋梅(トウロウバイ)、香りも強く花弁の内側まで黄色い素心蝋梅(ソシンロウバイ)等の栽培品種がありますが、一般的には素心蝋梅が多く栽培されています。

ちなみに、同じような名がついている花で、クロバナロウバイがあります。これはロウバイ属ではなく、クロバナロウバイ属になります。また、ロウバイは中国原産ですが、クロバナロウバイは北アメリカ原産です。春から初夏にかけて咲き、「紺ロウバイ」「ニオイロウバイ」とも呼ばれています。

クロバナロウバイは北アメリカに2種分布し、樹皮にも芳香がある所から北アメリカ先住民はその中の1種カリカントゥス フロリドゥス種の葉と根を薬用とし、樹皮はすり潰して香辛料に使っていました。

<いけばなと蝋梅>

蝋梅は栽培しやすい事もあり、観賞用に庭木とされている所が多く見られます。12月頃から葉に先駆け、細工物の様な黄色い梅に似た花を咲かせ、その香りは道行く人にやすらぎを与えてくれます。

秋には丸い大きめの葉が黄葉して目を楽しませてくれます。時に残った実と枯れて落ちかけた葉を残し黄色い花を付ける、そんな一枝に心和まされます。

枝自体はあまり面白い物とは言えませんが、季節を感じさせてくれる1種です。淡いベージュ色の木肌に黄色の1cm 程の丸いつぼみを細い枝先まで沢山付けている枝に寒菊など葉のある草木を添え、1輪挿しも良いものです。師走の慌ただしい生活の中でひと時安らげる時間を持てるかもしれません。

大きなお正月用の花で、大王松や梅の苔木、千両に南天、そんな中に無造作に枝を出している蝋梅を入れると、それこそ五感でお正月を感じる事が出来ます。未の年の初めにどんな花をいける事になるのか解りませんが、和める花をいけたいものです。

若松、万年青(おもと)、千両、梅は当然の花として、これに蝋梅を一枝加えてみて下さい。

roubai.jpg

photo by suggie

#今月の花 #花に寄せて

最新記事

すべて表示

「華道玄解」 荒木白鳳著 閲覧28 2022年8月のコラム 8月に入り、連日異常な暑さが続いている日本列島ですが、この気候とは裏腹に、今年は8月7日から24節気では立秋にあたります。立秋前の18日間が雑節の土用で、今年の土用の丑の日は7月23日と8月4日の2度あり、いわゆる鰻を食す日があります。土用に鰻を食すようになったのは江戸時代から、と言われていますが、実は古く万葉集にも夏バテに鰻を食すことが

「華道玄解」荒木白鳳著 閲覧27 2022年7月のコラム 今年は久し振りに夏の京都の風物でもある祇園祭が開催されるようです。京都に住んでいると当たり前のような光景も、遠くの人には魅力のある祭りの1つだそうです。確かに「コンコンチキチン コンチキチン」とお囃子が流れると、懐かしくお祭り気分に浸れます。例年であれば宵々山、宵山と街中が人であふれるのですが、今年はどんな規模で催されるかは解りません。 随