冷夏の予報から一転、今年も猛暑な日々が続いていますがいかがお過ごしでしょうか。 暦の上では秋が目の前の8月は、秋の草花の1つである杜鵑草(ほととぎす)をご紹介します。 杜鵑草は、鳥のホトトギスと同じ漢字を使って杜鵑、不如帰、時鳥、などと書いていることがありますが、これはこの花の名前にも関連しています。ホトトギスの胸にある模様に杜鵑草の葉や花びらの斑点が似ているところから付けられたようです。杜鵑草は、被子植物門単子葉植物網に分類されるユリ科ホトトギス属の多年性草本植物です。開花時期は、8月下旬から11月下旬までで、4-5日間花を咲かせます。なお、名の由来にもなった斑点は、花が咲くころには消えるようです。学名をTricyrtis hirta、花言葉には秘めた意志や永遠にあなたのもの、永遠の若さなどがあります。なお、学名のTricyrtis(トルキルティス)は、ギリシャ語の「treis(3)+kyrtos(曲)」が語源で、これは雄しべの花柱が3つに分裂している姿を現しています。 杜鵑草は、主に東アジア(日本、台湾、朝鮮半島)に19種類が分布しており、そのうち10種類が日本固有種です。 白地に紫の斑点があり、関東・新潟以西に自生している代表種であるホトトギスの他に、シロホトトギス(花に斑点がない)、イワホトトギス、ヤマホトトギス(白地に紫の斑点)、ヤマジノホトトギス(山路杜鵑草;白地に紫の大きな斑点)、シロバナヤマジノホトトス(白花山路杜鵑草)セトウチホトトギス(瀬戸内杜鵑草;オレンジ色)、タマガワホトトギス(玉川杜鵑草;黄色地に赤紫色の斑点)、チャボホトトギス(淡黄色で小さい花。花は1日で終わる)などがあります。 これ以外にも絶滅危惧種や準絶滅危惧種に認定されているタカクマホトトギス(高隅杜鵑草)やサツマホトトギス(薩摩杜鵑草)、キイジョウロウホトトギス(紀伊上臈杜鵑草)、スルガジョウロウホトトギス(駿河上臈杜鵑草)、サガミジョウロウホトトギス(相模上臈杜鵑草)などがあります。 この時期庭の片隅に咲く杜鵑草を見るとなぜか心安らぎます。真夏とはいえ、秋の風を感じるのは日陰に咲く小さめの杜鵑草の仕業なのかもしれません。 <いけばなと杜鵑草> 庭に咲く杜鵑草はあまり大きくなりませんが、花材として市場に出回るものは50cm~1mにもなるものがあります。岩肌に垂れ下がる様な種類も多い杜鵑草ですので、立ち上がる様に育てられたものかと思います。これは原種のホトトギスではなく、ホトトギスとタイワンホトトギスの雑種ではないかと思われます。ちなみに、タイワンホトトギスも絶滅危惧種に認定されています。 伝書四方の薫、四季饗応用草木の八月の部に時鳥草(別名;油點花)として、品格も姿も中程と記されていますが、黄油點花は小花で品も良く美しいと説明があります。葉の裏が少し紫がかったものがありますが、これが特に上品とされています。 60cm以上のものを籠花器などに1種で挿けるのも良いのではないでしょうか。花茎に反りがあるものが多いので、横姿や寄せいけの留として使うのも適しているかと思います。 ためる(曲げる)場合、節は必ず折れますので、節と節の間の花茎をためます。葉は時に大きいものがありますが、なるべく小さいものを選びます。格花は、足元が肝心です。真っ直ぐにためる事が望まれます。 薄・桔梗・女郎花などと風情豊かに秋の野を表現しても安らぎますね。いけて和らぎ、見て和らげる花がいけばなの基本です。愉しみましょう!
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