あっという間に今年も残すこと1か月となりました。今月はこの季節に馴染みの深い花の1つである山茶花(さざんか)を紹介します。 何とも読み難い字ではありますが、山茶花はこの名の音の響きが童謡「たきび」に出てくる懐かしい子供の頃の光景を思い出させてくれ、心にぬくもりも感じさせてくれるこの季節の花です。もっとも、昨今はむやみにたき火をすると叱られてしまいますのでご注意ください。 山茶花は、ツバキ科ツバキ属サザンカ種に分類される耐寒性常緑高木で、学名をCamellia sasanqua Thunb (英名 sasanqua) 、別名には岩花火、姫椿、藪山茶花、茶梅、茶梅花、茶花、小椿などがあり、江戸時代より前にはヒメカタシ、コカタシ(カタシが椿の意)と呼ばれていました。また、花言葉は「困難に打ち勝つ、ひたむきさ」、原産国は日本とされています。 ちなみに山茶花という名は、中国では椿類一般をさす「山茶」(葉がお茶のように飲料になるところから「山に生える茶の木」の意)を使っていたのですが、いつの頃からかこの山茶花(さんさか)が茶山花(ささんか)、さざんかと訛ったものといわれています。 山茶花には多くの品種があり、代表的なものとして香りのよい園芸品種の親木として使われるヒメサザンカやカンツバキ、ハルサザンカなどがあります。 山茶花の開花時期は、冬を迎える時期の10月下旬から4月くらいまでです。世間で紅葉を見かけるようになる時には多数蕾をつけ、椿より少し早く咲き始めます。 花の色は白、桃、赤、白、桃縁などがあり、その花は散る際にバラバラになります。この散り方が椿との見分け方の1つにもなります。 別名に「姫椿」と称されるように、椿との見分け方が難しい花ですが、花の散り方の他に葉で見分けることもできます。山茶花は、葉の縁が鋸の刃のようにギザギザになっていますが、椿はそのギザギザがありません。 <山茶花といけばな> いけばなの花材として、この時期の花としては珍しいもので重宝しています。 山茶花は、「伝書 四方之薫」饗応用四季草木の十一 十二月之部の中で、「上○」と記されており、これは「品善し挿けて善し」を意味しています。特に、白と朱色の絞りの様な花で「鎌倉」という種は「秀逸」とあります。 山茶花は、花葉共に密集している花材であることから、選定に心を配る必要があります。 花と葉は違いますが椿と同じような幹で、たまるもの(曲げられるもの)ではありますが、ある程度ためると先端の重さもあり、「シコッ」といった感触で折れてしまいますので注意しましょう。 また、椿ほど幹の動きの美しさもありませんので、枝の動きを見せるより花や葉を見せることを考え、なるべく裏葉を取り、混み合わないように注意します。
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