今年は長い夏でしたが、ようやく秋めいてきました。今月は、秋に花を咲かす石蕗(つわぶき)を紹介したいと思います。 石蕗は、キク科ツワブキ属に分類される多年草です。学名をシノニム、英名をLeopard plant、別名にイシブキ 、ツワ。石蕗の名は、艶葉蕗(つやばぶき)、つまり「艶のある葉のフキ」から転じたものと考えられます。 開花時期は10中旬から11月下旬で、葉の間を抜けて花茎を葉より高く伸ばします。フキが夏緑性(夏の間緑の葉をつけて、秋に落葉する)であるのに対して、石蕗は常緑性(年中緑の葉をつける)です。なお、中には斑入りのものもあります(これが英名のLeopardの由来?)。変種には、リュウキュウツワブキやオオツワブキなどがあります。 民間薬(生薬名たくご)として茎と葉を打撲や火傷に、発疹や腫れ物には葉を用います。 また、食用にもなり、佃煮のキャラブキは茎や葉で作ります。 <いけばなと石蕗> 未生流伝書「体用相応の巻」に「葉物十種組み方の心得」として以下の説明があります。
唐岩蕗は大なる故に、葉数十枚余りも遣う。朝鮮岩蕗はしがみて小なり。 深山岩蕗は花葉とも三尺余りも伸びる。 葉先八手の如く細かに切れたり、俗に一名しし草とも云う
宝子やお宝子という少し大きい葉で、別名般若草というものもあります。これは、鳥取や但馬の方からの物をよく見かけます。群生しているようですがマムシに注意してください。 <いけ方> 石蕗は、葉の形が同じようなもので変化に乏しいため、葉の大小を意識して配します。一花五葉、二花五葉、二花七葉、三花七葉、三花九葉までいけます。 伝書には、「尤も常緑物なる故に、花なき時も艶しき草花を応合い挿けてよろし」とあります。 擬宝珠や葉蘭などと同様に、葉自体に美しさのあるものは他の草木の応合い(あしらい)につかうことで相乗効果を期待できます。 用に大葉、体に用より少し小さい葉、体用の間の添えに小葉(この葉を力葉と呼びます)をいけ、体用の間に葉より高く(10:8位の高さ)陽の花をいけます。留の界葉(さかいば)又は留添えに小葉、留に体より少し小さい葉をいけ、留の内側に用の葉より低く陰の花をいけます。 花が3本以上入る場合は、花でも葉でも格を取る形になりますが、花が1本か2本の場合は葉で格を取ります。なお、日本の場合は、背の高い体・用の間の花を陽の花、背の低い留の花を陰の花と考えます。 水揚げが特殊で、茎のくぼみに葉の付け根から下まで条スジを入れます。深さは茎の半分から3分の2位まで針か何かで入れますが、深くなると割れてしまいますので注意して下さい。割った後深水で養います。花も同じように水揚げをします。 (photo by golbenge on Flickr)