梅雨明け直後から炎暑ともいえる暑い日々が続いていますが、今年は8月7日が「立秋」にあたります。つまり、暦の上では秋になります。万葉集の巻八では、秋の七草について、以下のように詠まれています。 萩の花 尾花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花 この秋の七草の中から、今月は万葉集に14首詠まれている女郎花(おみなえし)を挙げます。 女郎花は、オミナエシ科オミナエシ属に分類される多年生植物で、別名に粟花(あわばな)、思い草等があり、その花言葉は美人、美しさ、はかない恋、永久、忍耐などがあります。また、漢方にも用いられ、全草を乾燥させて煎じたものは解熱・解毒作用があるとされています。 花の名の語源には、へしは圧し(へし)であり美女(おみな:女性)を圧倒するという説、へしは飯であり花が粟粒に見えるのが女の飯であるという説、等異説あります。 同じオミナエシ属に、男郎花(おとこえし)という花がありますが、こちらは花が白色で女郎花より少し大きく、強い感じのものです。 山に行くとタンポポの葉の様な形で葉だけが生息しており、この葉が大根の葉の形に似ているところから未生流では大根葉と称しています。花は、葉とは別に地面から花茎が伸び、その先端部に小さな花が集合して半球状になります。そして葉が出ていた所に翌年花茎を伸ばします。 以上のように、2年に渡って花と葉が咲き分ける事を、未生流では「二季の通い」と称して、女郎花をいける時は花と葉を別の株でいけて出生を表現します。 ちなみに、女郎花のようにこの二季の通いに準じて咲く花はあります。秋のお彼岸の頃に見かける真っ赤な彼岸花(曼珠沙華:まんじゅしゃげ)をご存じの方も多いと思いますが、こちらの葉を知っている人は少ないのではないでしょうか。 「花と葉が同時に出ることはない」ことから「花見ず葉見ず」とも言われ、花が咲き終わって冬から春に葉が茂り、夏には葉は消え秋に花茎を伸ばします。 <いけばなと女郎花> 季節を重んじるいけばなでは秋の花材として使います。分類上、伝書には段取り花として説明があり、7段9段11段といけますが、葉は別の株で横姿に3枚か5枚でいけます。なお、女郎花は切り花にすると独特の強いにおいがありますので注意が必要です。 桔梗(ききょう)、刈萱(かるかや)、女郎花の3種寄せでいけますが、これは体に桔梗、用に刈萱、留に女郎花と配し、初秋の花として旧暦7月7日(七夕)にいけます。 秋の景色に欠く事の出来ない花材の1つで、細めの女郎花が優しげに咲く姿は、秋の野の爽やかな風さえ感じるものです。秋の草花を幾種もいけ、野辺の爽やかな景色を彷彿させたいものです。