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  • 未生流東重甫

9月の花:ススキ


秋は草花が美しい季節ではありますが、色々ある中から「中秋(ちゅうしゅう)*の名月」に飾る芒を今回はテーマにします。奈良時代の歌人である山上憶良(やまのうえのおくら)が秋の七草について、万葉集(巻8)で詠んでいます。

「萩(はぎ)の花 尾花(おばな) 葛花(くずばな) 瞿麦(なでしこ)の花  女郎花(をみなえし) また藤袴 朝貌(あさがお)の花」

朝貌の花が何を指すかは諸説ありますが、桔梗とする説が最も有力です。また、尾花が芒を指し、主に芒の穂を意味しています。 秋の七草は春の七草のように直接何かをする行事はなく、摘んだり食べたりするものではなく眺めて楽しむもので、秋の花野(野の花が咲き乱れる野原)を散策して短歌や俳句を 詠むことが古来より行われていました。芒の群生に夕日が金色に輝く姿は他に例えようの無い神秘的とも言える世界を見せてくれます。

未生流でも芒は季節の花としては貴重なものとして取り扱われており、伝書「体用相応の巻」「原一旋転の巻」に説明がなされています。 芒の種類は沢山ありますが、生け花に使う芒は縞芒・矢筈(やはず)芒等、葉の美しいものを始め穂の大小で選ぶ事もあります。

縞芒・矢筈芒の様に葉の美しい芒は、葉ばかりを200~300本もいける事がありますが、通常は5本から15本程度を使います。応合い(あしらい)は女郎花など、華奢な草花が似合います。 葉を形良く整えることが大切で、そこに穂を上手く添えるようにします。穂の軸に付いている葉は、回したり(回し葉)、削いだりして有効に使います。いける際、切り口を酢に浸 すことで長持ちさせることができます。

中秋の名月の花として、真麻穂(ますほ)・真蘇穂(まそほ)・政穂(まさほ)の3種を「体(たい)」・「用(よう)」・「留(とめ)」としていけ,「体」の後か「留」の奥に月の座を配すことで名月の花とするとあります。この月の座は闇の頃には使いません。なお、真麻穂とは、穂の丈一尺位の白い穂を、真蘇穂は穂の丈一尺位の赤い穂を、政穂は穂の丈五・六寸の白い穂を意味していますが、植物学上の種類は定かでない様です。

*:中秋とは8月15日のことで、中秋の名月とは8月15日夜の月と決まっています。これは当然ながら必ずしも満月とは限りません。

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