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  • 未生流東重甫

6月の花:擬宝珠(ギボウシ)


2018年 6月の花 <擬宝珠(ぎぼうし)>

清々しい天候に恵まれたゴールデンウィークも終わり、6月になりました。過ごしやすい春から初夏はあっという間にすぎてしまい、次は灼熱の太陽を楽しみに変えなくてはいけません。今年の夏こそは老体にムチ打って謳歌しよう!と思っているとその時々の気候に応じるように木花や草花が目を楽しませてくれます。

四季折々の美しさを感じられる喜びは我々に与えられている幸せですから、しっかりと満喫しましょう。そうすることで季節の移り行きで見る物が変化します。6月にもなるといよいよ水辺が恋しくもなり、照りつける日差しの中で力強く咲く花もあります。数あるこような植物の中から何処にでも暑さに負けず育っていて、かついけばなには欠く事が出来ない擬宝珠(ぎぼうし)をご紹介しましょう。

 擬宝珠は、被子植物、単子葉類、キジカクシ目、ユリ科(キジカクシ科とするものもあります)、リュウゼツラン亜科、ギボウシ属の総称で、学名をHosta Tratt、英名をplantain lilyといいます。 別名には、擬宝珠、白萼、紫萼、葱鳳花、あせ、あめふりばな、いわうな、いわな、うそはくり、うで、うまんつめ、うりこ、うりっぱ、うるいそう、うるいっぱ、うるえ、うれっぱ、うれのはな、えわぶき、おばこ、おんなかいろっぱ、がいるっぱ、かみなりおそれのは、かわな、かんのんそう、かんりゅうそう、ぎそう、ぎば、ぎびき、ぎぼうしゅ、ぎぼうず、ぎぼき、ぎぼし、ぎぼな、きりみき、ぎんぶき、ぎんぼ、げろっぱ、けべき、こうれ、こうれっぱ、ししのはがき、すじおばこ、たきな、でびき、とうばこ、ぼし、みずおばこ、めしつづみ、やちうり、やまかんぴょう、と数多くあり、地方により通称名が異なるものが多いようです。また、ギボウシ属は、東アジア特産で20種程からなり、日本での種数が多いです。

伸びかけた花形の先端の形が寺院の欄干などの飾りの擬宝珠に似ているところからこの名がつきました。谷沿いの岩場や草原、湿原にも自生する多年草で、根茎での栄養繁殖はもちろん種子からもよく育ちます。

また、ギボウシ属の花は花被片が基部から途中まで合着し、この基部の細筒部の先が膨らんで広筒部となりその先に裂片が開いて漏斗状の花を持ちます。密線は基部にあって、細い筒部が長いので口吻の長いマルハナバチが良く訪花します。一日花(いちにちばな:花が咲いてしぼむまでが1日の花)で、赤紫や青紫から白色の清楚な花が順々に咲き、根生する葉の緑に映える上、日陰でも育つので観賞用によく栽培されており、特に欧米で人気が高いです。

日本に広く分布するのはコバギボウシ、オオバギボウシ、イワギボウシの3種です。

 コバギボウシは、他のギボウシの葉が心形から楕円形の葉身と長い葉柄からなるのに対して、披針形の葉身が葉柄に流れる形の葉です。九州、四国、本州、北海道からサハリン、沿岸州とギボウシ属では最も広く分布し、湿原と草原に生育しています。コバギボウシより花が小形で葉が線状になり、葉身と葉柄の区別が全くなくなるのが水ギボウシで九州、四国、本州の愛知県以西の低湿地に分布する。

オオバギボウシは、花形伸長時の途中から苞が開出して反り返り、花瓶の先端からは星状に見えます。屋久島、九州、四国、本州、北海道の渡島半島までの草原、岩場、林縁に分布し、地生しています。

イワギボウシは、苞が小さく花茎伸長時の初期から苞の間に蕾が外から見え、葉裏の脈が滑らかです。九州、四国、本州の東北地方南部までと伊豆諸島に分布します。和名のとおり、岩上や樹上に生育します。

ギボウシ属は、別名の多さのとおり産地限定の種が多く、地域変異も大きいです。地域個体群の保全が大切ですが、乱獲により絶滅危惧種や危惧種となっている種や地域個体群が増えています。

<いけばなと擬宝珠>

擬宝珠のいけ方については、伝書「体用相応の巻」の葉物十種組み方の心得で以下の説明がされています。

擬宝珠(玉簪花)の出生も葉十方に出て、花は真ん中より生まれ出る。葉にて姿を調う。尤も添うて添わずの葉、堺葉をつかいて株を分け、花は葉組の中に遣う。先ず九葉三花迄挿すべし。大中小春夏秋花咲くあり、類多し。

伝承の花(格花)のいけ方は、一花三葉が基本で、そこから二花五葉、三花七葉、三花九葉までいけます。四方に葉が出ますので向かい合う葉を基本とし、その中に花を葉より高くいけるのが出生から基本となります。

三花の場合、体の葉と向かい合う葉と用の葉と向かい合う葉が背中合わせになります。反りの無い葉を選ぶか真直ぐに揉めていけます。留の葉と向かい合う葉も同様に留の葉に向かって揉めると美しくいけられます。三枚目の配し方は各自考えてください。

擬宝珠の花は、葉身と葉柄の付け根から少し反り返る特徴があるので自然手法では優しい葉を遣います。また、造形手法ではたくましいしい感じのする葉をとらえて取り合わせます。斑入りの葉は質感が優しく、葉の尖った先端とくっきり出ている葉脈を捉え、動きを感じる花にしたいものです。色彩手法ではただの色ではなく、取り合わせやいけ方で色の変化を楽しめるようにしたいものです。斑入りの方が色も明るく変化に富んでいます。

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