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  • 未生流東重甫

2017年9月のコラム <五巻筒>


2017年9月のコラム <五巻筒>

今年は三巻筒、二管筒、二重切や三重切そのほか竹の器について話を進めてきましたが、三巻筒に続いて五巻筒をご紹介します。 竹筒では、寄せ筒の二管、三巻、五巻、七管、九巻、十二巻、十五巻等々応用で何巻でも考えられます。活の員数に随い長さが決められ、組み合わせも決められます。 長さは活の員数から、寸法の数が決められ、24節の2寸4分から、十干の1尺、十二支の1尺2寸、天地の合数の1尺6寸、節気の2尺4寸、28宿の2尺8寸等々2寸4分から4尺8寸迄の20種と説明されている書もあります。ただし、未生流では伝書「規矩の巻」に五巻の寸法について説明には陽の尺6寸などとあります。これは、上記の20種の寸法に対しての陰陽の数*と考えられ、寸法的にはより細やかに考えることが出来るようになっています。

<五巻筒> 伝書「規矩の巻」に「是ヨリ曲物之圖未生斎康甫法眼好」として五巻筒の太さに対する長さが3種に分けて書かれています。太さ六七寸丸の竹、八九寸丸の竹、尺餘丸の竹と太さに応じて長さを決めています。 なお、器は、器だけを見ても花になる事が望まれます。伝書「三才の巻」の「花矩七十二箇条の花道第二の心得」に以下の説明があります。

その席も花、花台薄板も花、花器も花、花留も花、水も花、鋏も花、挿ける姿も花、挿ける草木は勿論花、心も花となるべきは冀う処なり

これはいけばなを志す者は心得ておくべきことではありますが、花展でさえなかなか苦戦されているように見受けられます。ましてや“心も花となる”となると極めて難しいようです。せめて見た目だけでも心得に準じて頂ければと思います。器が花として物語るものでなくてはならないことは説明の通りです。 唯々創って頂いた器が全てであることではないことを常々考えましょう。器を創るのも芸術であるならば、その創作芸術に対するいけ手の思いを器に反映するのもいけばな芸術の大切な所です。

さて、三巻筒は大意を持っている器である旨を先月まで説明しましたが、五巻となるといけ口も多く、表現することも多く考えられます。未生流の先哲の説明によると、多くの置き合わせがありますが、その置き合わせに付けられた名前は自然の織り成す妙象摂理の中からの描写とその特徴を表現するとしたもので、五行、梅花、八重垣、段杭、稲妻、山水、天の原、末広、不二山、初霜(伝書管見他より)と名付けられた置き合わせがあります。 これらの名称と置き合わせ自体が表現すべきことを物語ってくれますが、表現法とは別に基本的な見せ方や技法についても学ぶ必要があります。また、花材選びも大切で意味なく選ぶ事は出来ません。季節、ロケーションを考え山里水、山山里、里水水などを配分して、妙象摂理を踏まえ景色を創りだします。八重垣なら織り重なる垣根の景色を、段杭なら水辺の景色を涼しく、稲妻なら梅花ならと思いを巡らせ、花材を選び表現することを日ごろの景色から感じる事に答えを求めます。

五巻筒の置き合わせが物語る景色を、花をいける事でより解り易く、感じやすい物語を完成したいものです。そのためには器と花材との釣り合いが大切です。季節感あふれる花材でも釣り合いが取れていないと素直に受け取れないものです。花材によって大きさは変わりますので、器の1.5倍、2.5倍の長さに、等という前に、バランスを考える事が大切です。

以上のとおり、五巻筒は十二巻筒の置き合わせのベースにもなるもので、形に挿けるだけの心で取り扱ってはいけない事が暗に示されています。

なお、来月からは景色について述べていく予定です。

*:直角二等辺三角形の勾(短い2 辺) =陰と、弦(底辺)=陽の長さの差のこと。1:2≒1:1.414です。陰は基本1ですので陰とは言わず、陽の数(1.414倍)と区別します。

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