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  • 未生流東重甫

2017年10月のコラム <五巻筒:八重垣・段杭>


2017年10月のコラム <五巻筒:八重垣・段杭>

 10月は9月から引き続いて五巻筒を紹介します。 自然が織りなす妙象、摂理を形に変えて表現するべく組み方を変え、名称を付けて楽しみます。三巻筒では、3本の決められた長さの竹筒の並べ方でその大意を表現しました。これに対して、五巻筒では長さが決められている竹筒5本の配置があり、この長さは太さによって3種の組み合わせがある事は前回お話しした通りですが、作り方は1本の竹で切、節の合計9節が基本です。11節になっても節の数が陽の数(奇数)なら許されます。また、これらの配置方法は、未生流の先哲により「五行」「不二山」「山水」「八重垣」「段杭」「梅花」「稲妻」「天の原」「末広」と名付けられたなどの置き合わせがあり、その名称に伴ういけ方で表現します。 今月はこの中から一般的によくいけられている「八重垣」と「段杭」を紹介します。この2つの配置から見える景色は実際目で見るものだけではありません。様々な想像を加えることでより美しいものへと自分の感性で創りだしていきます。

<八重垣(やえがき)> 八重垣とは重なる垣根のことで、二重以上重複する事を八重といいます。花の八重は植物学上花弁の枚数や重なり方で細かく分けていますが、未生流の伝書の中では轡(くつわ:金属の花留めのこと)を一はみで「葎(むぐら)」、二はみで「八重葎(やえむぐら)」といいます。 遠くの垣根は手前の垣根より背丈のある物でないと見ることが出来ません。そこで奥に背の高い木物、手前に草物又は華奢な木物をいけて遠近を表現します。 <八重垣の置き方>

1番長い筒を一の筒、2番目を二の筒と呼び、この一番長い筒には、五巻の置き方が左旋の場合、花は右旋にいけます。上に示した置き方は、右旋ですので、一の筒には左旋(客位)に横姿をいけるのが基本的ないけ方です。 なお、花材は置き合わせの名称から、季節を踏まえ選びます。①②③の筒には木物を選びます。③④の筒には季節の草花や背の低い木物を選びます。 基本的ないけ方は、一番長い①の筒に客位で横姿、②の筒に主位で竪姿をいけます。この二本の筒が全体の姿の基となります。③の筒に主位で横姿か半横姿、④の筒に客位で半竪姿、⑤の筒に主位で小さく半竪姿をいけます。 花材を選ぶのは勿論、その花材を活かさなくてはなりません。大きく挿けるもの、小さく挿けるものそれぞれが一つ欠けても完成されない情景を思いながら花姿を調えます。1本の筒では表現できない季節感あふれる垣根の情景を思い浮かべ、この五巻に写し見てください。形ばかりを求めていけることはできません。

<段杭(だんくい)> 段杭とは、橋の支柱の回りや川岸の崩れ防止のために、幾重にも段を違えて丸太を打ち込んだ物のことです。その支柱や杭が風雨に晒され不規則に朽ちていく風情豊かな描写から名称を得たもので、主に水辺の趣をいけるのに適しています。 季節的にも水辺が似合う初夏から初秋くらいが適当な季節ではないかと思います。花材も余り重厚な木物を遣わず、優しく表現したいものです。重々しくない木物に草花、水辺の杜若や河骨を加えて里から水辺の景色を思い挿けたいものです。

<段杭の置き方>

上の図のようにいける場合、①の筒に客位で大きめに横姿を、②の筒に主位で竪姿をいけてこの2管で山里の景色をいけます。また、③の筒に客位で半竪姿を①の筒の下にいけ、④の筒に主位で半横姿か横姿、⑤の筒に位で半横姿か半竪姿をいけます。 全体の花姿からは力強さより、五巻の配置の名称を考えて風情を意識した景色いけを心掛けてください。花材選びは五巻筒の意味を知り、景色を思い浮かべ選びます。

寄せ筒は、筒が離れない様に並べることが基本です。また、いけた花が筒を横切ってはいけません。筒が重なるとあまり横へは出せませんので、八重垣の場合、⑤の筒には小さく半竪姿をいけるとほとんど筒を横切るものはありませんが、段杭の場合、④の筒が②の筒を横切りやすく、⑤の筒が③の筒を横切りやすくなります。このように左右に横切る姿は好まれるものではありませんので注意が必要です。 三巻筒より五巻筒、五巻筒より七管筒、七管筒より十二巻筒と、筒が多くなればなるほど基本をいけるのが難しくなります。まずは基本を学び、絵を見て行けるのではなく感性でいけてみましょう。

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