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  • 未生流東重甫

真行草花台薄板時候の心得


2016年10月のコラム<真行草花台薄板時候の心得>

10月は旧暦で神無月といい、別名は他にも多くあります。 1つでも季節を感じる言葉があれば良いのですが、応章、応鐘(おうしょう)、開冬、亥冬(がいとう)、神去月、雷無月(かみなかりづき)、吉月、極陽、建亥月、玄英、春、坤月、時雨月、始冰(しひょう)、上冬、小陽春、初冬、新冬、正陰月、早冬、大月、大章、大素、鎮祭月、初霜月、方冬、孟冬、陽月、立冬、良月、等と挙げてみますと聞きなれない言葉も多くあります。 別名の文字からも10月は季節の中でも微妙な位置にある事がわかります。実は10月11月には、花器や花材を選ぶ、また、いけ方について考える事が多くあります。そこで今月は季節にちなんだことをお話ししたいと思います。

今年は1年を通じて様々な花器を紹介してきていますが、床の間はもとより、座敷や花展会場の設えの中に飾る際に必ず必要なものが花台や敷物です。 花台や敷物は、床の間に置く際には、そのものの値打ちを上げる役目だけでなく床を汚さないようにする役目もあります。また、そもそも花台にするべきか、薄板にするべきか、また、それが季節に合うかどうかを考えながら選ぶ必要があります。

未生流では花台や敷板を選ぶときの基本的な考え方があり、これを基に色々アレンジし、よりその場に馴染むように考えます。こちらについて伝書に基づいてご説明しましょう。

花台と薄板の違いは字のとおり花台は高さのあるもので時候により高さが違います。その一方で薄板は板状のもので縁の切り方で時候を表します。 時候は冬を真、夏を草、春秋を行として真行草に分けてそれぞれ高さや切り方で変化を付けます*。 天板の大きさは、長さが陽の9寸(約386mm)、幅が9寸(約270mm)**で、これは活の因数***である9を用いています。ここでの9の意味は「地員、一時9刻陰陽定合の数なり」と説明があります。なお、薄板の大きさも同様ですが、厚みが異なります。花台の天板の厚さ3分6厘、薄板は2分8厘です。3 分6厘の36は地員、地の九と四季の合数、2分8厘の28は二十八宿天星四方の合数です。

また、花台の高さとその根拠は下表のとおりです。

花台の種類 (高さ) : 根拠 真 (7寸2分) : 活の因数の72を使っています。72の意味は、季節の中心である四季の土用18日の合数からなります。 行 (4寸8分) : 活の因数の48を使っています。48の意味は、卯の下刻より酉の上刻まで、明界における陰陽消長の48刻の48からなります。 草 (3寸6分) : 活の因数の36を使っています。36の意味は、黄道の360度の360で36の大数であり、36は地の因数9に四季の合数からなります。

高さの違いは、花を見る方への心配りも兼ねています。夏の暑いときには水際の涼しさを表現し、逆に冬の寒い時期には水際をなるべく見せないように配慮されています。 陶器、竹製、木製の器のは露を打って涼しさを表現することもありますが、白磁や青磁の場合は、その質感から器自体が表現するものを妨げるので露は遠慮します。 おもてなしの花としての心配りは自然が良いですね。

<薄板> 花台は高さの違いで季節を表現しますが、薄板は縁の切り方で真行草を表します。真は一方落し、行は蛤落し、草は矢筈落しとなります。

床の間に花を置く場合は、左右の中央で前後の中央より少し奥に置きます。花会などもこの心得があれば良いのではと思います。 このように床の間での決まり事も多くありますが、別の機会でお話しできればと思います。

*:季節は24節気で分けています。 冬(冬至~春分前日まで):真 春(春分~夏至前日まで)、秋(秋分~冬至前日まで):行 夏(夏至~秋分前日まで):草

**:未生流では、花器や花姿の寸法は、直角二等辺三角形の斜辺の長さと直角の頂点からの底辺(斜辺でない辺)への垂線の長さの関係に由来しています(下図)。斜辺:底辺は1:√2で、1が基本ですので、底辺のみ“陽の寸法”と呼びます。

***: 活の因数について次の説明があります。「伝書規矩の巻」には、“天は四方に七を司りて、二十八宿を体とす。地は四方に九を司りて、三六〇度の元とす。而天地人三才、陰陽五行、十干十二支、二十四節の員に寄り、表裏曲尺の目を用い、一より百八迄の中、活の員に当て寸尺を定めたる器物は、自然に叶ひて天下の宝器なり”とあり、花器や花台などの大きさは全て活の因数にあてはめて作られたものです。

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