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  • 未生流東重甫

10月の節気:寒露と霜降


暦の上では秋も深まり冬装備。朝夕の心地よい涼風が幾分の肌寒さを感じさせます。山里の朝はめっきり冷え込み、野草が秋の風情を感じさせてくれる時期で、通年ある菊も本番を迎え、色とりどりに咲き誇りここかしこで菊の競演が催されます。

10月の別名である神無月(かんなづき)は、全国の神々が出雲大社に集まる月で、出雲以外の国では神様が留守になる月がその名の由来と言われており、神々が出雲に出向かれる道中の山や里では美しく装います。10月と11月は錦繍の秋を彷彿させる山々の景色が眩しい輝きを見せます。

日に日に変化していく山の景色の移り変わる様も、春に芽吹く木々の変化にも増して心奪われるものが有ります。一年という短い周期で盛衰の姿を見せてくれる木々草々に感謝です。

物思う秋ではありますが、食欲の秋でもあります。どちらを好むにしても事欠かない季節ですね。

<寒露(かんろ)>

寒露は、24節気の17番目にあたります。旧暦9月、戌(いぬ)の月の正節です。秋分後の15日目にあたり、新暦の10月9日頃で今年は10月8日から10月22日の15日間になります。天文学的には、太陽が黄経195度の点を通過するときを云います。

寒露とは、晩夏から初秋にかけて野草に宿る冷たい露のことであり、雁などの冬鳥が渡ってきて、菊が咲き始め、コオロギなどが泣き止む頃です。秋の深まりを思わせるこの頃になると五穀の収穫もたけなわで、農家では繁忙を極めます。山野には、晩秋の色彩が色濃く、ハゼの木の紅葉が美しい季節です。朝晩は肌にそぞろ寒気を感じ始める様になります。なお、暦便覧では、「陰寒の気に合って露結び凝らんとすれば也」と説明しています。

寒露の本朝72候の初候として、鴻雁来(こうがん きたる:雁が飛来し始める)、次候として、菊花開(きくのはな ひらく:菊の花が咲き始める)、末候として、蟋蟀戸在(しっこく とにあり:きりぎりすが戸の辺りで鳴く)があります。

<霜降(そうこう)>

霜降は、24節気の18番目にあたり、秋の季節の24節気最後の24節気で、「しもふり」ともいいます。旧暦9月、戌の月の中気です。新暦の10月24日頃で、今年は10月23日から立冬の前日11月6日までの15日間になります。天文学的には、太陽が黄経210度の点を通過するときをいいます。

霜降とは、秋も末で、露が冷気によって霜となって降り始める頃という意味からです。この頃になると秋のもの寂しい風趣が醸し出されてきて、早朝には所によっては霜が降りて白く化粧する景色を見る様になり、秋草もめっきり減り、代わりに楓や蔦(つた)といった山の紅葉が冬の到来を感じさせられる時節です。「暦便覧」では、「露が陰気に結ばれて霜となりて降るゆえ也」と説明があります。

この日から立冬までの間に吹く寒い北風を木枯らし(こがらし)と呼びます。

霜降の本朝72候の初候として、霜始降(しも はじめて ふる:田園に霜が降り始める)、次候として、霎時施(こさめ ときどき ふる:秋も終わりとなる頃で、小雨がしとしとと降る)、末候として、楓蔦黄(もみじ つた きばむ:紅葉や蔦の葉が黄ばむ)があります。

10月の雑節として、10月20日から11月6日までの18日間が秋の土用になります。土用というと夏の土用が全ての様に思われているようですが、実は各季節の18日間ずつ合計72日間あります。五行説木火土金水に季節を当てると、木=春、火=夏、土=土用(物の中心)、金=秋、水=冬となり、この中の中心にあたる土用が各季節の先述の72日間になります。

この他、雑節ではありませんが、十三夜(じゅうさんやつき。豆名月または栗名月とも呼びます)として、仲秋の名月にお供えをした同じ場所で約1ヶ月後の十三夜に栗や豆をお供えします。どちらかだけにお供えする事を「片見月」といい、よくないとされていますので注意しましょう。五行説や月に関しては又の機会にお話ししたいと思います。

10月の別名に冒頭の神無月の他に、は吉月(きちげつ)、陽月(ようげつ)、良月(りょうげつ)、大月(たいげつ)、時雨月(しぐれづき)、初霜月(はつしもつき)、建亥月(けんがいげつ)、雷無月(かみなかりづき)、神去月(かみさりづき)、鎮祭月(ちんさいげつ)等があり、小春(こはる)や上冬(じょうとう)と呼ばれることもあります。

季語も沢山ありますが、中から花に関連したものを挙げます。紅葉、初紅葉、薄紅葉、桜紅葉、紅葉狩り、椿の実、金木犀(きんもくせい)、山梔子(さんしし)、烏瓜(からすうり)、数珠玉(じゅずたま)、菊、野菊、萩、秋桜(こすもす)、竜胆(りんどう)、薊、鶏頭(けいとう)、蔦(つた)などがあります。この他、栗や蜜柑、柘榴、銀杏、萩、後の月など、時節柄月や食べ物に関したものが特に多いようです。

時候の挨拶として、錦秋の候、秋涼の候、清秋の候、秋雨の候、寒露の候、秋晴の候、紅葉の候、秋冷の候、仲秋の候、名月の候、黄葉の候、秋容の候(全てに、~のみぎりも可)などがあり、書き出しでは、菊薫る秋‥、秋色濃く‥、日増しに秋も深まり‥、収穫の秋を迎え‥、山粧う‥、いわし雲‥、初雁‥、色なき風‥、などを使います。

深まる秋に哀愁を感じる言葉より、爽やかな風に秋の光、そして実り多き時節に因んだはつらつとした言葉で、元気を感じて欲しいものです。朝の一言が一日の栄養源にもなる、ましてや久しい人からの手紙にはいろんな思いに馳せる力があります。言葉は感じる事を促すものです。大切にしましょう。

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