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第4回 未生流傳書三才の巻 《序説》

未生流東重甫

2024年6月「今月のコラム」


今月も伝書三才の巻の序説に出る言葉を解説することで、より広く深く序説の意味を理解できることを願うものです。


「陰陽和合虚実」と易の思想で一切のものが陰陽に配合せられる「一陰一陽之謂道」ともいう言葉があります。これは、陽と陰とが対立するという意味ではなく、一度は陽となり一度は陰となり、陰陽が無限に循環変化(陰陽転化)していくところに宇宙の生成発展があるという意味です。また、陰陽はとらえ方として次の5つの特徴で分ける事が出来ます。


  1. 陰陽互根(陰があれば陽があり、陽があれば陰がある)

  2. 陰陽消長(拮抗律、陰陽の量的な変化。陰虚すれば陽実し、陽虚すれば陰実す)

  3. 陰陽制約(提携律、釣り合いがとれた均衡。陰実すれば陽実し、陽実すれば陰実)

  4. 陰陽転化(循環律、質的変化。陰極まれば陽極まり陽極れれば陰極まる)

  5. 陰陽可分(交錯律、様々な陰陽の段階のこと。陰中陽、陽中陰、陰中陰、陽中陽 )


中でも陰陽消長は、未生流の思想とも関係が深く、“その陰極まった時陽が兆す。その現象を「一陽来復」としてその一瞬を捉え、特に「兆すと云へど未だ生ぜず」として大切にしており、この「未だ生ぜず」が未生の語源といわれています。本来、陰と陽は相対するものでありますが、この陰と陽が変易して行くというところに易の思想があります。変化の上からは森羅万象一刻と雖も変化しないものは無い、一切のものは流転してしばらくも止まない、昼は明るく夜は暗い、春夏秋冬は移り変わり、花は開いては枯れて行く、しかしこの変化の姿の中にもまた変化しない不易の法則があります。天は高く地は低い、日月星辰の運行はしばらくも止まることはありませんが、運行には自ら不易(変化の中に隠された不変の理を指しています。例えば季節の変化は循環という法則を持っており、自然法則や秩序或は理にあたります)の法則があります。この簡単と複雑と不変化とを変化の中に説明するのが易の思想のようで、陰陽とは切り離す事の出来ない縁で結ばれているものとなります。 


日を陽とし月を陰とする、表を陽とし裏を陰とする例のごとく、天円地方の和合から生まれた三角鱗に含まれた美の定義である1:√2 、いわゆる√比例の美しさを持っています。この三角鱗から割り出された陰の目陽の目の寸法によって表現されるいけばな故に花姿のバランスの美しさは他に類を見ないものでしょう。

陰の目陽の目とは、三角鱗である直角二等辺三角形の長い一辺を裏尺(陽の目)とし、同じ長さの二辺を表尺(陰の目)とします。その三角形を二つ折りにしても表尺裏尺の割合は変わらず、表が裏に、裏であったところが表にとなり、幾度折り重ねても表裏変化が繰り返される所から、表裏一体の形となり、陰陽和合の姿といえるものです。

寸法にすると、陰の目1に対して陽の目√2となり、美的黄金比として日本においても葉書きや本等昔ながらのものはこの比で造られているようです。ちなみにB5、A4サイズ等の用紙もこの割合で作られています。


陰と陽とに分けられるものと、陰と陽とで1つの物を形成する物があります。例えば、手のひらは表と裏が共存しています。片方ではなり得ない物です。木の葉や葉蘭のような葉物でも陰陽があり、表裏があります。植物は地水火の恵を受けている事で生育します。火は陽の恵みととらえると、地は陰ととらえることが出来ます。葉は陽と向き合うところを裏とし陰とする事で陰陽和合します。葉蘭の場合、葉の表は陰とし太陽と向き合います。裏を陽とし地と向き合います。菊の花の芯を陰とし、花弁の裏を陽とする事も同じです。


陰と陽の関係は全ての物に反映する事が解って頂ければ、理解しやすくなるのではないでしょうか。

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