2019年、平成31年・令和元年を振り返って
令和元年に元号が変わってすぐに古希を迎えました。1年が過ぎる速さは、当然毎年同じなのですが、いざ今年を振り返ってみると例年に比べて長く感じる1年でした。具体的に何かを成し遂げた、達成した、という実感はないので不思議なものです。
いけばなに携わってから早くも50年が過ぎました。教えることができる師範の免状を取得してから40年余り、その後本当の意味で人様に教えるようになって25年、四半世紀が経ちました。1年を振り返るためのこのコラムを書きながら改めて時間の過ぎる早さに驚きながらも、はたしてこれまで自分がやってきたことの意義について自問自答を繰り返す日々です。手前味噌ではありますが、古希を迎えてもまだ向上心はあるようです(笑)
いけばな界だけでなく、あらゆる業界の課題だとは思いますがいわゆる教育者が少なくなってきているのではないか、と一抹の不安を覚えることがあります。残念に感じる時もあります。これは自戒の意味も込めてですが、せめて伝統を受け継いでいるいけばな文化においてはそうであってはいけない、と常々考えています。
移り変わりの早い今の時代を生き、かつ200年の伝統を次の200年後に導くことを常に意識していないと臨まないと近未来さえ危ういのではないでしょうか。いけばな界に何が足らなかったのか、何が足りないのか、そしてこの世情に必要なものは何であるかを考え行動に移さなくてはならないのではないでしょうか。
いけばなが「華道」、つまり「道」であることを今一度考え、新しい改元である令和の時代に恥じることがないよう一歩一歩と丁寧に進むようにしたいものです。
年の瀬になると慌ただしく、1年を振り返ってみると積年のテーマである「泰然自若」の心には程遠いのも毎年のような気もしますが、その心に近づく努力を忘れず、新たな希望の年を迎えたく思います。
今年1年お付き合い頂いた事を感謝いたしますと共に、輝かしい新年を迎えられます事を祈念いたします。
2019年12月吉日
東 重甫