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未生流東重甫

2019年9月のコラム 住空間の花5


2019年9月のコラム 住空間の花5 

冷夏と言われていた今年の夏も7月の末頃から一気に猛暑日が続きさらに8月には40度を超す地域もあるほどでしたが、9月に入ると35度を越してもどことなく秋の気配を感じるようになりました。

9月といえば、月の美しい時節です。今年の中秋の名月は9月13日、満月は14日15日頃になります。中秋の名月の中秋を仲秋と表現されていることがありますが、仲秋とは9月を意味しています。なお、わたくし事ですが、9月の満月は海外のとある場所で過ごすこととなっており、今からとても楽しみにしております。

月にはロマンがあり、呼び名にも多くの美しい言葉があります。仲秋の月を明月、望月、満月、月今宵などと呼びます。また、8月15日は芋名月といい、月に新芋を供えて祀ります。十五夜が過ぎると、欠けていく月を惜しみ、十六夜(いざよい)、立待月、居待月、臥待月、更待月、二十三夜、宵闇などと称します。

いよいよ秋にもなりますと、花の後の緑の実、そして木々の紅葉が見られるようになります。春の花にも劣ることの無い華やかな色を見せてくれます。花1輪の美しさと讃えられる春に対し、此のひと時の美しさと惜しまれる葉を静かに演出したいものです。木の枝に残る2枚3枚の葉が、枝の趣をより演出してくれます。

紅葉の美しい木々も、枝あればこその美しさと考え、一枝の妙を味わいたい。

もうすぐ初めて1年になる「住空間の花」ですが、いけばなの基礎である花の美を知るところまではまだまだ到達していません。

形に挿けるいけばなも元来は一枝一輪の美をしっかり感じなければなりません。美しいだけの寄せ集めではなく、各々の個性から引き出してやる美しさを表現に導かねばなりません。

いけばなに必要な植物への目を原点に戻し、植物の本当の美を求めたい。心安らぐ花は技巧では無い、存在さえ感じさせなくてもよいのです。玄関に入った時、また、居間でのくつろぎのひと時を静かに演出する花であれば良いのです。このような花をいけるためには、その草木の一枝一輪に美しさを見出す事であり表現する事です。それが「住空間の花」として学ぶべきことです。

ただただ「きれい」で終わらせたくはないですね。

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