2019年6月のコラム 住空間のいけばな2
令和元年の出足の険しさは世間での諸々の事件に加え、天候の不順で始まりました。
北海道で最高40度のこの時期の例年の2倍以上の気温になり、全国的にも5月の最高気温を更新するような日がありました。“雨降って地固まる”こんな初めのような気がします。年号に負けない良い時代を迎える予感を覚えます。
今年度のコラムは、教室の移転に伴い始めました「住空間の花」を取り上げました。この「住空間の花」はおそらく耳慣れない言葉であり、一般的には理解できないものかもしれません。一言でいうと「今の時代での生活空間といけばな」を意味しています。
日本家屋でのいけばなとして稽古に励んでいる従来の花の姿は、大きさが基本的には60cmから90cmの空間ですが、現代の住宅事情や生活空間を考えるとこのような大きな花を飾ることは難しい、もしくは不可能なことが多いのではないかと思います。しかし、それでも季節の花や清々しい緑を飾ってみたいと多くの人が思いを馳せており、そのような声も多数耳にします。
このような今現在生活している空間を利用しつつ、新鮮な草木を飾るために考えられることを模索することを学ぶ講座が「住空間の花」です。
いけばなを学ぶとは、いけばな文化の歴史を学ぶと同時に礼儀、人倫の法を学ばなくてはなりません。歴史を知ることは容易い時代ではありますが、礼儀、人倫の法を学び生活に結び付けることは容易ではありません。形だけを求めがちなのがいけばなの現状ではありますが、折角携わってきたものを活かすためにも、我々は伝統から得る事のできる「おもてなし」をいけばなで表現します。そして、住空間の花も「おもてなし」に他ありません。
桔梗や女郎花の花1輪、空木や紫陽花の1枝、杜若や菖蒲の1株を手に取り、じっくり眺めて美しさや個性を見つけだし、適当な器に自然観を表現します。ここでは、造形手法では無く、自然での生き様の美しさを形に表します。自然だからと横への動きを強調するとその花が主張してしまいます。
住空間での花はそこに存在すると和らぎを覚えるような花で良いかと思います。技巧を凝らさず、手練を感じさせない様な花にしたいものです。