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未生流東重甫

2018年11月のコラム <陰陽五行8>


2018年11月のコラム <陰陽五行8>

11月の24節気では季節は初冬です。気節は10月節と中、24節気では10月節の7日が立冬、72候初候では山茶始開・次候では地始凍・末候では金盞(水仙)香、つまり冬の花が咲き始める頃になります。10月中の22日が小雪、初候で紅蔵不見・次候で朔風払葉・末候で橘始黄、いよいよ冬の景色へと移り行く様を感じます。

季節の流れは1年周期でめぐるもので、どの季節にも美があります。なかでも京都の秋は格別で、錦織成す錦秋が一番似合うのではないかと思います。真っ赤に燃えるような紅葉、黄金に輝く黄葉等、自然の美しさを満喫できるのが京都であるような気がします。

全てを陰陽に分配する所を考えると、美しさにも陰と陽がある物でしょう。自然に美しく彩る景色は陽、ただ彩り豊かに飾る美は陰、とこのように感じてみると、どの美しさにもそれなりの美しさがあります。

陰陽五行が確立したのは前漢の時代で紀元前、つまり2千年以上前です。あまりにも古く、今の生活に対して何の影響もないように感じてしまいそうですが、現在の私たちの生活に浸透していることはこれまでのコラムで述べて来ました。同様に、陰陽五行説と200年以上も続く多くのいけばな流派とはいけばな理論として固く結ばれています。

<いけばなと陰陽五行>

「いけばな」は、陰陽説(森羅万象、宇宙の全ての物が様々な観点から2つに分類される)、三才説(さんさいせつ:あらゆるものは陰陽の和合から生まれる)、五行説(ごぎょうせつ:宇宙に萬有する五つに元気、木、火、土、金、水にすべての物を配当する)を主に、神、仏、儒の三道を踏まえ、礼儀作法、室内の飾付、饗応の心構えとその花などを教えてくれるものです。未生流など多くのいけばなの流派は、この考えに基づき独自の解釈と表現でいけばなと結び付けています。

未生流では、天地和合の姿(三角鱗)の頂点を天地人と名付け、三才の姿としています。そして天を体、人を用、地を留と名付けて配し、これを三才格と称し基本花形としています。

また、この天地人三才格を発展させ、体を中心に前後左右に枝を配したものを五行の姿とし、中心五行の土を体(三才格の体)、体と向かい合う枝で五行の火を用(三才格の用)、体の手前の枝で五行の木を留(名付三才の留)と名付け、ここまでは三才格と同じ形ですが、ここに奥行きと後ろを配します。その体の向うは五行の金で相生(あいおい:奥行きの枝)、体の後ろは五行の水で控(ひかえ:後ろの広がり)です。

植物との関連から、方角と季節を当てはめると枝の役割も解りやすいです。

五行格の名称それぞれに方角と季節を配すと、体・天・土用、用・南・夏、留・東・春、相生・西・秋、控・北・冬となります。方角では留の東、陽の南、相生の西、控の北そして体は中心の天・中央です。季節では留の春から用の夏、相生の秋、控の冬と方角も季節もめぐります。体は物の中心で方角は天であり中央、また、土用はそれぞれの季節の中心です。その意味合いから考えて花枝を配すことが求められます。

未生流伝書「三才の巻」の序説には次の説明があります。

(前略)…出生の本性を失わず天円地方の理に随い挿け上げたる処は即ち陰陽五行悉く備わる。(以下略)

花枝を形に挿けるとは、形の意味を知り、その花枝の本性・出生を考えて配することが重要です。こうすることで自然と陰陽五行が備わり、いわゆるその花枝らしくいけることが出来るということです。

この三才の巻の序説には、耳慣れない言葉が沢山出てきますが、今いけばなを志している皆様にはとても重要なものばかりです。花枝をただ形に挿けることは簡単ですが、内に秘めたいけばなの意味を考えることが大切です。

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