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未生流東重甫

2017年12月のコラム<五巻筒;五行>


12月、師走という言葉だけで何だか忙しい感じがします。毎年のことではありますが、今年1年を振り返ってみると確かに様々なことがありました。そしてこれが良かったのだろうか?あれで良かったのだろうか?と答えが出ないまま、また来る年を迎えます。それでも、間違いなく前に進んではいます。 「新しい年の私はもう去年の私ではない、少し経験を重ねた今年の自分を感じたい。」このような思いで過去創りに励んで1年を終える時節が師走です。

毎年の師走、行く年のしんがりで新しい年を迎える最大のイベントの月であるはずです。12月は24節気の仲冬にあたり、節は大雪(たいせつ)12月7日ごろ、中は冬至(げし)12月22日になります。 また、以前の24節気のコラムでもご説明しましたが、四季の最初を四立(立春・立夏・立秋・立冬)、つまり2月4日の立春(初春・正月節)から一年が始まりますので、まだ新年までは1ヶ月以上あるわけですが、元旦は特別な日です。

さて、12月のコラムでは五巻のしんがりで基本の「五行」を主にお話します。

<五巻;五行> 五という数は、活の員数でいえば五行の五、つまり五行説の木・火・土・金・水の五で宇宙に循環する五つの元気とされます。五巻の五行の置き方はこの意味から、①の筒を中心に②~⑤の筒を四方に並べます。

元来、五行格に挿ける花姿は左右奥行きのある物ですので、花材の自然観を表現することが簡単なものです。今までご説明してきた山水、八重垣、段杭、梅花の置き方は①の筒が一番奥にきますが、この五行の置き方だけ①の筒を中心に、②の筒と③筒が①の筒の左右奥に来ることで、景色として奥行きのある広い景色を表現することが出来ます。

下図に示したとおり、2通りの置き方があります。右の図は梅花と似ていますが置き合わせの順番が少し異なります。

左図の基本的ないけ方として、①の筒に大きく主位で横姿、②の筒に大きく客位で竪姿、③の筒に小さく半竪姿を、④の筒に客位中位の大きさで横姿または半横姿で、⑤の筒に主位中位の大きさで半横姿または横姿をいけます。 右図では、①の筒に小さく客位で竪姿、②の筒に少し大きく客位で横姿、③の筒に大きく主位で竪姿を、④の筒に小さく客位で竪姿または半竪、そして⑤の筒に小さめに主位横姿または半横姿を入れるとバランスがとれます。なお、筒は高い方から山里水の順位が基本で、取り合わせをイメージの景色に会うように選ぶ必要があります。

これまで説明してきました八重垣、段杭、水、梅花そして上述の五行の置き方のほかに、稲妻、不二山、天の原、末広、初霜などの置き合わせがありますが、先哲の残した考え方を理解したうえで季節感、花材選び、景色などを五巻筒の置き合わせに映し見て楽しみたいものです。

三巻筒、五巻筒そしてその中から二管筒を選んでいける際は、ただ三巻の竹の筒と考えるのではなく、基本的な意味として竹の太さや筒の高さ、節の数、そしてその三巻筒に釣り合う花材であり花姿の大きさを踏まえ、自然との融合が成されたときに初めて見て安らげる「おもてなしのはな」になります。

技術や煌びやかさだけを求めた「虚」の姿で花の美しさは表現できないことを知り、稽古に励み自分で進んだと感じた時に、また最初の一歩を踏み出すことでいけばなの醍醐味を味わって欲しいものです。

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