2017年11月のコラム<五巻筒:梅花(ばいか)・山水(さんすい)>
今月は五巻筒の梅花と山水を取り上げてみます。すでに五巻筒の詳細については、先の2か月に渡っては三巻筒を含め先月、先々月と話してきましたので割愛しますが、五巻筒や三巻筒がどのような基準で創られたかを今一度考えてみましょう。
竹は、四季を通して入手可能であり、陶器や唐金のように前もって用意することもなく、好きな形にすることが可能です。この手軽さもあり、花器として普及し、そこに流派としての世界観を込めたものであろうと推測されます。そしてこの世界観が流派の発展と共に世間に知らしめられたと考えます。もちろん、長さ、太さ、形にも決められた寸法があり、その寸法の根拠はその世界観の中にあります。
<梅花(ばいか)>
梅花は、字のごとく季節は早春です。春の花を表現するときや霞がかかった景色をいける時等に景色を美しく想像し、季節感や花の美を表現します。もちろん、取り合わせにも注意が必要です。いける花の大きさや形にも意味がありますのでただ形にいけるだけに終わりたくはありません。5本の筒にいけるのですから、季節やロケーションを感じさせる表現法は多くあります。いけばなにも、してはいけない決まりごとがあり、これを知ることが表現法を多く知るコツでもあります。
梅花の置き方は、下図のように2通りあります。Aの図の方は五行に似ていますが、個人的にはBの図の方がより梅の様で好みです。
梅や椿を始め季節の木物に加え早春の草花を加え、情緒を楽しみます。
1) 花姿A:
1番長い①の筒に小さく客位竪姿、②の筒に大きく主位竪姿、③の筒に中位客位半竪姿、④の筒に小さ目主位半横姿を、⑤の筒に小さ目客位横姿をいけます。ただし、この花は③の筒を横切ってしまうので注意が必要です。
2) 花姿B:
長い①の筒に大きめ主位横姿、②の筒に大きく客位竪姿、③の筒は①の筒の花の下に収まる主位竪姿、④の筒に小さ目客位半横姿、⑤の筒に小さく主位半竪姿をいけます。
花材の選び方は花姿Aと同じ考えです。
<山水(さんすい)>
山水の名称のごとく山、澤、野、池の遠近を主としたもので、晩春から初夏の季節を思いながらいけます。
1番長い筒は山であり、木本をいけ、2番目と3番目の筒には里の華奢な木や草花をいけます。また、4番目および5番目の筒には水草をいけます。
花材は大きく山里水で分けます。山は木本、里は華奢な木物や草花を意味し、水は水草です。遠近は、高さや並べ方で表現しますが、いける花材でも気を配る事が望まれます。
置き方は下図のとおり、奥3本に中高で並べ、手前に低い筒を2本置いて山水画と同様、山から里の水辺までを景色に捉え表現します。①の筒で山の景色、②と③の筒で山麓の景色、④と⑤の筒で水辺の景色をいけます。
もちろんこのいけ方が全てではなく、①と②の筒で山を表現しても良いと思います。
<花姿の例>
1番長い①の筒に大きく客位竪姿で山の峰を表現するようにいけます。②の筒に小さく主位竪姿または半竪姿で麓、裾野を意識します。さらに③の筒に小さく客位竪姿か半竪姿でこちらも麓、裾野を意識しています。④の筒に小さめに主位半横姿か横姿で山から川へと移っていく景色をいけ、⑤の筒に小さ目客位半横姿か横姿で水の流れを予測するようにします。
いける際は景色を花に託して表現します。単純に花をいければ良いのではなく、景色を表現する花でなくてはなりません。花材選びは大切なことですが、いけばなとして花を活かす、花が感じさせてくれることが望まれます。
以上の山水を意識したいけ方のほかにも、この置き方で表現できることは多くあります。例えば、①の筒に上述の通り客位横姿をいけ、②の筒に大きく主位竪姿を挿けるのも自然な形で良いと思います。
要は、何を表現するのかを考えていける事が必要であり、いくつかの種類の花材をそれぞれ 形よくいけるだけの五巻筒ではないことを認識して下さい。
機会があれば、まずは自分でいけてみること。案ずるより産むが易し、です。一度いければ二度目に得るものは大きいですので是非トライしてみてください。