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未生流東重甫

2017年5月のコラム <三巻筒 三才和合>


2017年5月のコラム <三巻筒 三才和合>

花展で必ず用いられる器には、水盤・広口のような幅が広い器(据物花器)と寸渡・二重切竹花器、三巻筒のような背のある器(置き花器)があります。特に竹で創られた器は加工し易いことに加えて手に入り易いこともあり、未生流初代家元の時代から重宝されてきました。伝書でも竹花器を創るうえでの諸注意が細かく説明されています。

一本の竹で創る器は五大(空風火水地)から割り出した寸法に“活の員数”を基に形や大きさが決められ、また、何本かを寄せて用いる竹花器(寄せ筒)は太さに応じた活の員数に当てた長さの寸尺で造られます。

 すでに2月、3月、4月のコラムにて三巻筒(寄せ筒)についてご紹介しました。今月は、活の員数から決められた三巻筒の「三才和合」についてご説明します。

まず、活の員数ですが、未生流伝書「規矩の巻」の最初に以下の説明があります。

“(前略)且天ハ四方ニ七ヲ司トリテ、二十八宿ヲ體トス。地ハ四方二九ヲ司リテ、三百六拾度ノ元トス。而天地人三才、陰陽五行、十干十二支、二十四節ノ員二寄リ、表裏曲尺ノ目ヲ用ヒ、一ヨリ百八迄ノ中、活ノ員に當テ寸尺ヲ定タル器物ハ、自然ニ叶ヒテ天下の寶器ナリ、(以下略)”

つまり、1、2、3、5、6、7、8、9、10、12、15、16、18、20、24、28、30、36、48、50、60、64、70、72、80、90、96、100、108が活の員数ですが、これに4も活の員数に含まれている書もあります。

何故この数が活の員数であるかの説明はまたの機会にしますが、花器花台等、オリジナルで造られるものは全てこの活の員数に当て寸法が決められ、三巻筒の長さもこの活の員数から1の筒は二尺四寸、2の筒は一尺六寸、3の筒は一尺と定められています。数の意味は前月の説明のとおりです。

<三巻筒 三才和合>

混沌の時である太極から天と地が別れ両儀となり、天地陰陽が和合することで物が生じ、その結果人が誕生します。これが陰陽和合の姿として天地人三才が生じ、完成の姿を表したものです。宇宙生成の様々な変化、形などを表現することが三才和合のいけ方といわれています。佳麗、変化と調和、宇宙完成の姿として、太極・両儀に比べて一番佳麗な完成した姿にいけなくてはなりません。

いけ方は、一番長い1の筒に横姿、2の筒に1の筒と反対の方向(1の筒が客位なら2の筒は主位)で竪姿、3の筒に1の筒と同じ方向(1の筒が客位なら1の筒も客位)で半竪姿か半横姿をいけるのが常法です。なお、花材によっては、いけ方を変化させることもあります。

例えば、1の筒に横姿、3の筒に1の筒と反対方向に大きく竪姿、2の筒に1の筒と同じ方向か少し手前に振り出すように小さく半横姿か半竪姿をいけます。

花姿の大きさは花材によって少しは変わりますが、三才和合は優雅に美しく挿けたいものです。

花材は、山里水の心で選びいけるものですが、山山里、里里水、里水水等時期の花材を取り合わせて美しい景色を表現したいものです。桜や牡丹、杜若などは一種いけも美しいものです。 

季節の花材を規矩にのっとり種々取り合わせる事が、変化の根本となります。素敵ないけばなは季節の花と器、いける場所と挿ける人の心が1つになって生まれるものです。

なお、4月15日、16日の両日に米寿を祝う個人展が京都南禅寺横の正的院で開催されました。この個人展での作品の中には、三巻筒三才和合の置き方で、1の筒に小手毬を客位の横姿を用流しで、2の筒に牡丹桜を大きく主位の竪姿、3の筒に花開いた躑躅(つつじ)が客位の半横姿にいけてありました。

季節感といい、素材感色合いといい、ロケーションも含めて素敵な作品に感じました。大きくいけてあるにもかかわらず優しさをも感じさせてくれる作品であったように思います。

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