2017年2月のコラム ≪三巻筒 1≫
当HP開設以来、1) 京都三大祭り、2) 五節句、3) 二十四節気と七十二候、4) 伝書三才の巻、5) (伝書三才より)器と花と日本の文化や年中行事と生け花、それに係る未生流の基礎的知識についてご紹介をしてきました。2017年は三才の巻から少し離れ、日ごろよく目にする器の中から寄せ筒について1年を通じてご紹介していきます。
生け花は京都発祥ですが西日本や中部・東日本に至る日本津々浦々に流派があり、正確な数は定かではありませんが300流派は下らないかと思います。当然、流派それぞれが独自のいけばなを展開しています。未生流は大阪を拠点としており、かつては33の流派があったこともきいていますが、現在の数は不明です。
子細は異なっても、遡及すれば同じ未生流です。ほとんどは同じ伝書で学び、同様の形にいける事が多く、当然器も似たようなものを用います。
一般的なおけいこ用器は、水盤と寸渡です。特に新花は水盤、格花は花材により寸渡もしくは水盤を使用します。いける際は当然、どのような形でも良い訳ではありません。伝書規矩の巻に説明されていることを守り、花を挿けるための器であっても器自体が意味を持つ美しいものでなければなりません。今年はそんな中から2代家元創意の竹の器で、三巻*・五巻を紹介したいと思います。
花展では寄せ筒として2巻、3巻、5 巻、7巻、12巻、15巻程度までいけられていることがありますが、伝書にいけ方が説明されているわけではなく、3巻と5巻のみ規矩の巻に器を造るための説明があります。ただし、流派によりましては、12巻まで説明がなされているようです。
未生流では先哲の残したものを参考に器を作り、いけられています。
なお、2巻筒は3巻筒の内1 と3 の筒か2と3の筒を組み合わせます。1の筒と2の筒は節が2つあるため、2本で4 節と陰の数字となりますので使いません。
<三巻筒(さんかんつつ)>
三巻筒は、伝書規矩の巻に曲物未生斎康甫法眼好みの最初に説明があり、二代宗匠の創案のよる寄せ筒の基礎となるものです。
1本の竹に活の員数(かつのいんすう)**を当て長短を決めるのですが、6~7寸丸の竹(円周が6~7寸、つまり20cm程度の物)の場合は、1番長い1の筒は、1か年24節気にちなんで2尺4寸、2番目に長い二の筒は天員10と地の数6(天の員7と地員9)を加えたもの16にちなんで1尺6寸、3番目に長い3の筒は十干の10で1尺とします。
なお、基本的な配置では、2尺4寸、1尺6寸、1尺の3種の高さの竹筒を離さずにいけます。とある書物には以下の説明があります。
三巻筒の性質は風流に非ず 冥界の大意の基ずいて 無形の姿を有形に移して観じみる悟道の一也
なお、この有形には、大極、両儀、三才和合、そして天地が左右に旋る象をもって左旋、右旋を基本の組み方として5種類の形がありますが、詳細についてはまたの機会に説明します。
*:異なる高さの寸渡2本を二巻、3 本は三巻と称します。一方で、1本の竹にいくつもいける口がある場合は2つの場合は二重、3つの場合は三重花器と呼びます。
**;伝書規矩の巻に、「天は四方に七を司りて二十八宿を体とす。地は四方に九を司りて三百六十度の元とす。天地人三才、陰陽五行、十干十二支二四節の員に寄り表裏曲尺の目を用い、一より百八迄の中 活の員に当て寸尺を定めたる器物は自然に叶い天下の宝器なり。」と説明があります。