• 未生流東重甫

草木種々取り合わせ挿けの心得


2016年12月 今月のコラム<草木種々取り合わせ挿けの心得>

今年は、未生流で基本となる花道具の種類と扱い方、つまり宝器である七種竹花器とそれぞれの意味、二重三重切、釣瓶、盥・馬盥、籠・垂撥、船、轡、据物花器に続いて、これらの器に花をいける際の花姿花器相応の心得をご説明しました。

花器の種類といけ方を学んできましたが、花を選ぶ際の約束事を理解して初めて、饗応にも独楽にも楽しむ事が出来ます。そこで、今月は自信を持って挿ける事が出来るように、「草木種々取り合わせの心得」で1年を締めくくりたいと思います。

常日頃の稽古にて、一種いけは、置き花器や据物花器にいける事がよくあります。花材は、禁忌二十八箇条を理解した上で、時と場所を考慮していければ良いですが、花材が2種以上になる場合は注意が必要です。

ここでは伝書に基づき基本的な考えをお話ししますが、基本レベルに留まらず、それを応用して花材の取り合わせを考えることも楽しみの1つではないでしょうか。

伝書三才の巻には「草木種々取り合わせ挿けの心得」として草木の順位を始め取り合わせの大切さが次のように説かれています。

置き花器に三種挿ける時は、先ず体につかう草木の丈五尺も伸びる物ならば、用に遣うものは三尺より伸びざる物、留に遣う物は一尺五寸より伸びざる物、この心得にて取り合わすべし。(中略)右に準じて色の見切*1等なきよう考え取り合わせ挿くべし。又据物等に株を分けて挿ける時も同様の事なり。(以下略)

同じ器や寄せ筒に2種以上いける場合は、山里水*2、出生から大きさ、色の順位*3等を踏まえて順序をかえずにいけます。据物なら大きいものから、寄せ筒や重ね切りの器は一の口*4から順に配します。ただ美しさだけを求めて取り合わせるのではなく、草木で表現したいものを考え、草木の順位を踏まえて取り合わせます。

 伝書三才の巻に示されている寄せいけの取り合わせをお示しします。

伝書では、三重切に五種もいける場合の取り合わせの説明も細やかに説明されていますが、ここでは割愛します。

また、据物(広口など)にいける場合も上記に準じて取り合わせます。時に草物ばかりを9種11種もいけることがありますが、よくよく勘考あるべしと伝書に述べられています。伝書を読み、色見切りや出生、色の順位を弁え取り合わせてください。

1種挿けの花姿にも季節感、自然観だけでなく、いける場所との調和など、多くの事を考え併せる必要があります。3種5種以上の場合は、1種挿けで求められることに加えて自然との関わりの場所や景色を表現すると、同時に風情、情感といったものまで表現できるようになります。だからこそ、なお一層草木の取り合わせの大切さ、難しさを感じます。

草木に順位があるとはいえ、品性という点においてはまた別です。大きな背丈の物でもいけて品の良くない草木もあり、小さな草木でも杜若、水仙、福寿草、春蘭などのように極品なものもあります。

たとえ花葉が美しいものであっても姿が整っているとは限らず、一方で姿形は良くても花葉が美しく無い物もあります。そんな場合、取り合わせの1つ1つを用いるべき所を考え、配すことで他の花材を活かし、調和することができます。

いけ花として用いられる花材も、江戸期の昔からあるもの、無くなったもの、増えたものもあります。取り合わせの参考にしながら季節、情景、情感を映し出してみてください。

人の社会と同様、人それぞれの長所を活かすことがより良い社会を創ることに繋がるのと同じで、会席の花も余り頑張りすぎると観る人からすると安らげないものです。また、1人の考えが全ての人より長けていることはまずありえません。

花の取り合わせを考えるのと同じように、花の心となり私を去り考えことで速やかに循環するものです。常々、「心も花となるべきは冀う処なり」を忘れてはいけませんね。

*1::禁忌二十八箇条の一つで、白と白を赤で切ること。例えば白い花の次に赤い花を用いて色と切り、そしてまた別の白い花を用いる。

*2:山とは木々、里とは華奢な木物や草花、水とは水草で蓮、蒲、太藺、杜若、河骨等々の事。

*3:色の順位は上から白紫黄紅赤で、色の薄いものから濃いものへの順序に等しい。

*4:三巻五巻筒のように寄せ筒は一番長い筒、三重や五重切のような重ね切の筒の場合は一番上の口を一の口という。

#七種 #花に寄せて

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