2016 年8月 今月のコラム <船の取り扱い>
いけばなの器(花器)には用途別に多くの種類があります。いけばなは、鎌倉、室町時代の供花から発展し、江戸時代には一般人の床の間を飾る花として親しまれ、この頃には花器として形や材質も随分自由に考えられていました。竹や桐、檜など木材で創った広口や盥、陶器での瓶や水盤、銅や鉄で砂鉢や薄端等いろんな形を模して作ったもの等があります。
未生流では加工が容易で、材料の調達に心配がなく自然の長物である竹を使い、五大から得た基本の寸法を活の因数に照らし創り上げた7種から変化した21種類の花器を宝器として大切に扱います。(2016年1月~6月のコラム参照)
これらの他に竹で作ったものに船があります。その船も木製、金属製、陶製などがありますが、基本は竹で創ったものになります。吊り下げた状態で使用する船を釣舟、置いた状態で使用する船を置船といいます。船の先端(船首)を舳(へさき)(へさき)、船の後ろ端(船尾)を艫(とも)(とも)、そして船の中央を胴と呼びます。
伝書三才の巻では、船の基本である出船、入船、停船についてと、置き船について、銅船の挿け方についてと三種の異なった船での取り扱い方、挿け方の説明、伝書体用相応の巻では、沖往来の船、渚往来の船、掛り船綱花の景色と同じ船を使って三種の景色の説明がなされています。また、伝書規矩の巻では、竹製での異なった形の船の寸法を詳しく説明されています。 なお、船の種類として、常船、湖船、唐船、置き船、銅船と大別できるようです。
船は、床の間に吊っていける位置が決められています。床の幅を3分割して、床柱から1つ目、奥行きは床の中程に吊ります。船は必ず明り口の方に舳先を向けます。 陽の床(上座床)には出船で帆花は客位、陰の床(下座床)には入船で帆花は主位をいけることになります。 また、床縁から船底までが約90cmですので、船と吊る高さはこれより高く(約105cm)釣ると沖往来になり、低く(約75cm)吊ると渚往来の景色になります。
船の帆と櫓を模して適当な花材で挿けます。花の大きさや向き、形にももちろん約束事があります。十分伝書を読み込んで挿けてください。挿け方の説明はここでは割愛しますが、挿ける船が意味するところをしっかりとらえ、遠くの景色と近くの景色では選ぶ花材が違ってくるように細やかな所まで気を配ってください。 船も走っている船は舳を上げますし、停まっている船は波に揺れる姿となります。