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未生流東重甫

いけばな×百段階段2016


いけばな×百段階段2016

日時:2016年4月1日~3日 於:目黒雅叙園 東京都指定有形文化財「百段階段」

日本の伝統文化の1つである「いけばな」と昭和を代表する画家たちの作品が各部屋の天井や欄間に施された美の空間との共演イベント「いけばな×百段階段2016」が2016年3月15日から2016年5月15日まで目黒雅叙園にて開催されました。 このイベントは、日本いけばな芸術協会全面協力のもと、2か月にわたって週替わりで合計51の流派が展示を行われ、未生流もこの51流派の1つとして、第3期(3月29日~4月3日)に出瓶しました。

「百段階段」とは通称であり、昭和10(1935)年に建てられた目黒雅叙園で現存する唯一の木造建築であり、現代でいうところの宴会場として使われていた7部屋を99段の長い階段廊下で繋がっているものです。7部屋それぞれの趣向があり、造りも異なる部屋に1流派ごとに作品を展示しますので、一般的な花展と違って空間との「共存」をより感じるイベントであったかと思います。 7つの部屋のうち、未生流に割り当てられたのは「漁礁(ぎょしょう)の間」という下から2つ目の部屋でした。こちらの部屋は、全て純金箔、純金泥、純金砂子で仕上げられ、彩色木彫と日本画に囲まれた色彩豊かな空間でした。やはり経年による劣化は否めないところもあり、「金で仕上げられ」といいつつも京都の金閣寺を思わせるような煌びやかさはないながらも、柱や天井、欄間に刻まれた歴史を感じずにはいられませんでした。 このような場所を与えられての作品は、特にその部屋を活かせるような作品創りが望まれます。もちろん、植物での空間芸術でもあるいけばなが特徴がある部屋を活かせられないことはありません。というのも、いけばなの成り立ちが仏様に供える空間美であり、部屋の空間美、すなわち観る人をもてなす花であるからです。

作品を挿けることでより安らぎを感じることが出来れば作品が活きていることになります。前述のとおり、7つの部屋の中でも一番鮮やかな色使いの彫刻が施された「漁礁の間」での展示でしたが、この部屋の天井周りには五節句を意味する絵が色鮮やかに描かれ、三つの床の間にはそれぞれに桜、牡丹、楓の絵が色彩豊かに描かれていました。このような床の間に挿ける花は、目立っても同化し過ぎても駄目で、未生流には格花がある事で部屋を活かすことが出来ていると感じました。

私の作品は、山桜の苔木に若枝の葉桜を応合ったものです。この次期の山の未だ開花を見ない景色と山裾の葉が出始めた桜の景色で遠近高低の広い情景を表現してみました。

煌びやかな部屋だけに余計なものを省き、侘び寂の心持での作品です。作品は観て頂くものではありますが、まずは自分が感じ、その思いをいけばなに託したいものです。

以上、繰り返しになりますが、やはり背景に色が多数ある空間での作品作りは、作品そのものの色合いだけでなく、背景との色合いにも注意する必要があります。そのような意味でも今回の出瓶は大変意義のある経験であったかと思います。また、週末を挟んだこともあり、多数の来場者を迎えられたことを大変喜ばしく思います。

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