新春から初夏に掛けては美しい草花が咲き誇る時期ではありますが、蝋梅(ろうばい)、梅、山茱萸(さんしゅゆ)などが雪の降る季節から花を咲かせ、その後も春から初夏まで色んな花を咲かせます。今月は、木々の中でも4月中旬くらいから咲き始め、6月中旬くらいまで楽しめる「山の女王」と称される石楠花(しゃくなげ)をご紹介します。
全国津々浦々に石楠花の名所は多くあり、花の期間も長いことから、長い間楽しませてくれます。東京調布「神代植物園」や東京町田市「高蔵寺」には30種1500本の西洋シャクナゲ、群馬県嬬恋村「浅間高原しゃくなげ園」にはアズマシャクナゲが15000株、茨城県北茨城市「花園神社」んは天然記念物のシャクナゲがあります。また、関西では滋賀県蒲生市日野町「正法寺」に20000株、京都の嵯峨清滝「月輪寺」天然記念物のシャクナゲ、京都宇治「三室戸寺」に1000株、兵庫県播州「平福しゃくなげ園」150種15000株、奈良県宇陀市「弁財天石楠花の丘」7000株、和歌山県伊都郡高野町「金剛三昧寺」天然記念物樹齢400年のシャクナゲ等、他にも名所として名を連ねているところは多くあります。出来れば人ごみは避けてゆっくりとじっくり楽しみたいものです。
石楠花は、被子植物、真正双子葉類、キク類、ツツジ目、ツツジ科ツツジ属に分類されるRhododendron無鱗片シャクナゲの総称です。なお、日本でツツジと称されるもののの多くは有鱗片シャクナゲ亜属でありますが、欧米ではRhododendronと呼んでいるのは注意が必要です。
名の由来は漢名によりますが、背丈が低いため「尺なし」が「しゃくなげ」になったともいわれています。また、別名には、さくなむさ、とびらのき等があります。
ヒマラヤから中国大陸南部の山岳地帯まで分布し、おぼろ矩程化数の種を分化させています、その東の端が日本であり、日本には6種ですが野生での変種も多くあります。なお、石楠花の分布域は特徴的で、2種が同じ場所で見られることはめったにありません。
日本に生息する6種は、北方系のキバナシャクナゲ(本州中部から関東の高山と北海道)とハクサンシャクナゲ(本州中部以北のブナ帯上部から高山帯下部)の2種と、南方系のヤマシナシャクナゲ(屋久島)、ツクシシャクナゲ(九州、四国、本州中部地方まで)、アズマシャクナゲ(関東から東北地方南部)、エンシュウシャクナゲ(静岡県から愛知県)4種です。
花の色は白、ピンク系、赤がほとんどですが稀に黄色のものもあります。
園芸種はローデンドロンといい、西洋シャクナゲの総称で多くの品種が創りだされています。
石楠花の葉にはグラヤノトキシンなどのけいれん毒を含む有害植物ですので注意が必要です。漢方薬の「石南花」を名前の漢字としてあてられ、石南(オオカナメモチ)と間違えられて薬効があるとされていたようです。何でもそうですが名前で判断は禁物です。
<いけばなと石楠花>
石楠花の屈曲する枝は固く、揉めが効かないので自然な枝ぶりを活かすために少し大振りにいけるとよいです。松や杉など常緑物の格花の応合いにピンクの石楠花は暖かさを感じ美しいものです。水あげは良いものですので、事前の処理は不要です。
Photo: TANAKA Juuyoh / 田中十洋 on Flickr