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未生流東重甫

11月の花:万年青(オモト)


気が付くと今年も残り少なくなりました。もうお正月の花の準備に入っていますが、やはり年に一度の事、同じ花材を重ねて稽古する事が必要です。

私の教室では、毎年全員が若松と万年青の中でも特に特徴のある「大宗観(たいそうかん)」を七五三の伝でいけており、今年も例外なく我儘な動きをする大宗観を満喫する予定です。そこで今月の花で万年青(おもと)を取り上げてみたいと思います。

万年青は、単子葉類、スズラン科(ユリ科とされていた)、オモト属に分類される常緑の多年生草本で、学名はRohdea japonica Rothです。別名には大本や老母草、百年青、烏木毒、蘆藜、藜蘆(未生流伝書四方の薫)、岩蘭、ししのくびき、辛抱草、等があります。

万年青栽培の歴史はとても古く、徳川家康が江戸城に初めて入城した際、臣下より献上された縁起の良い品として、今でも縁起草とも引っ越し万年青ともいわれています。

万年青は、日本の代表的な観葉植物のひとつであり、先述のとおり栽培の歴史も古く、数多くの園芸品種が生み出されています。中国名の「万年青」が示すとおり年中濃緑色の光沢のある厚い葉をつけ、重厚感のある風格を持ちます。

1931年に日本万年青聯合会(のちの日本万年青連合会)、現在は公益社団法人日本おもと協会が新品種登録や栽培啓蒙を行っており、その公認品種は500種を超えています。また、1799年には、園芸品種として現存している都の城、古今輪、都獅子を始め、79品種に品種名を付けた印刷物が出ていますが、市場に出回り稽古や花会に使える品種は限られています。

葉の特徴の中で、形や厚み、大きさや斑(ふ:葉に白くなる部分がでること)の形や色の変化があり、これが観賞点の1つでもあります。都の城、大宗観、曙他、斑入りの違う品種があり、戦後は都の城が多く用いられていました。古書を見てみますと、意外とうねりのある大きめの葉が描かれていて、これは今の大宗観といわれるものでは無いかと思います。光沢のある濃緑色で厚みのある葉は60cm程の長さがあり、現在よく挿けられる都の城という品種より大きめで荘厳な感じさえします。ちなみに、一般的にお稽古やお祝い、お正月の花には都の城が用いられます。

<いけばなと万年青> 未生流では、伝書体用相応の巻の「葉物十種組み方の心得」で、岩蕗、擬宝珠、芭蘭などが説明されている中で十種目に万年青があり、以下の説明があります。

万年青の出生は始めに二葉陰陽と組みて出で又中より陰陽と組みて出る。この四葉東西南北を挿して開く、その中より三葉生じ一体に七葉定まりて花を生ず。これに依って挿花にあいする時も、七葉に実一本添えて組む。…中略…大広口に挿ける時は種々の万年青を取り交ぜ五株、七株も挿すなり。(以下略)

万年青に季節の華奢な花を応合うのも良いものですが、芽出度く七五三の万年青をいけて床に飾りたいものです。風格のある姿の中に、赤い実をかばうように配す姿は心温まる思いがします。

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