2015 年9 月のコラム 茶室の花の心得
酷暑だった今年の夏も終わり、今年は秋がいつもより早く訪れる気配を感じるような日々です。冬には春が恋しい、春には夏が愉しみ、夏には秋の訪れを待ち、秋には冬の遊びに期待する。四季それぞれの訪れを楽しむ気持ちが1年中幸せになる秘訣ですね。
今月は未生流としての「茶室の花の心得」をお話しします。
伝書三才の巻に、茶室に花挿ける時は、「姿小さめにして挿花の法を備え、閑静に挿けたるが至極宜し」と説明があり、この他に香の事や風炉先、三重棚についても記載があります。 また、古い伝書の 表華術三才の巻六十四箇条には次のとおり記されています。
茶室花之事 一 茶乃席は茶ノ木の花無用、華を派手に入レヌ事、花は三分に入ルベシ、花に禄有るときは茶の位をかろしめたる理あり、花は派手に入る事を禁ず 但し閑静に入ル事茶の席の入れ方なり 右取扱い如ㇾ此
なお、花姿は小さく、閑静に挿けると記されています。ここで閑静に挿けるとは、徳相でもなく貧相でもない「挿け上げたる姿しおらしくふらふらと出でたる枝に強みあり、花葉少なくして風流に挿けたるを閑静というなり」と伝書体用相応の巻に説明があるので参考にすると良いでしょう。
花材については、「伝書 四方の薫」に品が良いその時期の花材が挙げられています。そんな中から選ぶのも良いのではないかと思います。ただし、基本を踏まえ、無駄の無い、風流な花姿に挿けるに於いて相応しい花材を選ばなくてはなりません。
ちなみに、白梅、白菊、蘭等ありますが、香りの高い花をいけた場合は、香を焚く事は遠慮します。風炉先近くに挿ける場合は、萎れやすい花材を選ばず、火気に強い花材を選ぶ必要があります。
三重棚上の花については、参考になる図があまり無いようですが、「錦の幣」に出てくる図を見ますと、上の棚に小さく花をいけてあるものがあります。この天板(一番上の棚)の上は点茶には遣う事がないようで、品の良い花材を小締りにいけたいものです。 要は、おもてなしの花であり、華美に過ぎても、貧相でも無く、安らぎの空間を演出する役目を意識して花材を選び、いける必要があります。
茶室に限らず、お客様をお迎えするに当たっては、さりげなく麗しい花を用意したいものです。