• 未生流東重甫

10月:髪置と袴着


暑い夏が過ぎ、朝晩が過ごしやすくなると共に錦織りなす木の葉の競演が北の方から始まりました。本格的な秋の気配がすぐそこまできているようです。  今月は少し早いのですが、未生流の伝書「三才の巻」祝事の花の心得から髪置(かみおき)と袴着(はかまぎ)についてお話ししたいと思います。

旧暦11月は、一陽来復の月であり、その月の満月である15日が髪置・袴着のであったようです。一陽来復とは、陰陽説の陰陽の巡りのことです。陽が極った時は陰の兆しがあり、陰が極れば陽の兆しがあるとする陰陽の巡りの中で、11月は陰が極る月です。つまり、いよいよ陽の兆しがあるとする月であり、この月の中の日が満月の日であり、この日にお祝いをしました。 現在は、11月15日をその祝い日として七五二や十三参りをしていますが、満月ではありません。また、陰の中日でもありませんが、昔の名残として11月15日にお参りをしています。

髪置は、男女児が3歳になり、髪を伸ばし始める歳の祝いとして一陽来復の月である旧暦11月の満月の日である15日に行われていました。 祝いの席に花を挿ける場合、特に名前や匂いが悪い物とか弱いものは避けます。加えて、未生流では、その席の意を解し花材を選ぶ必要があります。髪置の場合は、髪が長く伸びる事を願い、頭髪に見立てた枝垂れ柳を使用します。応合いは誕生の花でも用いました純白で八千代の玉椿と称される白玉椿を用います。 「伝書四方の薫」に髪置の花として枝垂れ柳を体用として、留から体の後辺りまで水仙でいけた作例があります。水仙もやはりその時期の芽出度い花の一種で、厳しい寒さにも負けず咲く品善き花材ですので適切でしょう。

袴着は、髪置の祝いと同じ七五三の祝いとして行われており、男児又は貴族の女子が初めて袴を着ける儀式でした。別に紐落しといい、今まで紐で結んでいた着物に帯をする儀式でもありました。主に7歳の旧暦の10月15日に行われていたもので、後に5歳の10月15日になったようですが、現在では新暦の11月15日に行われています。

未生流では、誕生や髪置と同じ考えで、袴着の席に相応しい花を選ばなくてはなりません。松や竹、白梅、白玉椿、菊、芍薬、牡丹、万年青等、この他勢いが強く、芽が出やすい花を選びます。実物は何にても用う、とあります。 「伝書四方の薫」に袴着の花としての作例が3点あります。1点目は、2重切りに白梅、下口に福寿草、2点目は3巻三才和合の置き方で一の口に白梅を横姿、二の口に千両を横姿、三の口に寒菊を半竪姿、3点目は水盤に南天に寒薄を応合い、株を分けて横姿に水仙といった作例が紹介されています。

伝書三才の巻の祝事の花の心得の中で、「一切垂物は芽出度き席に用いず」とありますが、髪置の花では垂れ柳を用います。また、お正月の花として綰柳をいけます。 このように、花材を選ぶ場合はその席、その日の客、季節、置く場所等々を考える事が望まれます。現在においても、これ見よがしに技術を見せつけたり、立派な花であったりではお客様が寛ぐことは出来ません。 さりげないおもてなしは、多くの見えないところで気を遣うことが肝要です。

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