暑さ厳しいこの時期に白い花を咲かせ心和ませてくれる令法は、被子植物門双子葉植物網ツツジ目リョウブ科リョウブ属リョウブ種に分類される落葉小高木で、高さは3m~10mにもなります。 6月から8月にかけて、数本の細長い穂状の花序をほぼ水平に出すのが特徴です。 樹皮は茶褐色で、成木になると薄片となって剥がれ落ちまだらもようになるところから、夏椿の樹皮に似ているとも、百日紅の樹皮にも似ているともいわれます。 花は枝先に10cmから20cmの花序を数個だし、白い小さな花を多数つけます。 英名はClethra barbinervis、別名にハタツモリやある地方ではサルスベリと呼ばれることもあるようです。 令法は、北海道から九州までと済州島に分布していますが、実はリョウブ属には他に十数種あり、アジアとアメリカ大陸に分布しています。
名の由来ですが、古くから救荒植物(飢餓などの際の代用植物)として領主がお触れ(令法)を出した、その令法(りょうほう)が転訛して令法(りょうぶ)になったとも、花序の形から竜尾(りゅうび)が訛ってりょうぶになったともいわれています。
令法は、食用葉を食用の足しに穀物に混ぜ込んで炊いていました。味は殆どなく、美味しい物でもそれほどまずい物でもないようです。若葉を蒸して乾燥させて蓄えていたようです。今でも令法飯として、又若葉や花を揚げたり茹でたりして食しているようです。 なお、食用として利用していたもので、令法の他にマユミやオニタビラコ(菊科)なども「かてもの」とされていました。「かてもの」とは味や香りを楽しむものでは無く、唯量を増やすための物であったようです。「かてもの」に対して、「山菜」は食を楽しむものとされていました。 令法の歴史は古く、平安時代の和歌に「里人や 若葉つむらん はたつもり みやまも今は 春めきにけり」と読まれていました。 江戸時代、貝原益軒になる「大和本草」に名前が出ています。同じ江戸時代、米沢藩の飢餓救済手引書として刊行されたものが有名で、80種に及ぶ葉や根や果実について特徴や調理法が記されていたようです。 今の時代に食する必要は無いと思いますが、折が有れば食するのも一興ですね。
<いけばなと令法> 6月になると花市場で良く見かける花木物の一種です。 大きな壺に優雅な空間でいけてやると、活き活きとした表情を見せてくれます。花の特徴から、凛と竪姿をいけてもそのものの“らしさ”を表現するのは難しいようです。少し大きめの横姿に挿けると活きた表情をしてくれます。
葉の小さい枝を選んで挿けるようにします。枝先の方に葉を多く付ける木ですので、少し葉を省いて涼しさを表現して花姿を調えます。 新花にも使える数少ない時期の花です。活かしどころを考えて使って下さい。 気ままに咲く花の表情を楽しく表現してやって下さい。