この時期になると、とあるデパートからずっしりとした冊子が送られてきます。関東に合わせると1ヶ月早い「お中元」のシーズン到来です。お中元と中元とはどんな関わりの中に有るのかぼんやりとしかわかりません。
中元の説明をする際、切り離す事が出来ない三元があります。そこで、今月は三元(上元、中元、下元)についてご説明しましょう。 三元とは道教の行事で、上元(1月15日)は福を与える、中元(7月15日)は罪を赦す、下元(10月15日)は厄を祓う日とされています。日本では、上元は小正月として小豆粥を食して祝ったり無病息災を祈ったりました。また、中元には墓詣りをし、祖先の霊を慰めると同時に天国に上る様に祈ります。下元は庶民には特別な行事はなく、道教の行事として読経をします。陰暦15日ですので、ほぼ満月にあたり、月への信仰心が伺えるものです。
未生流では、伝書三才の巻の中で「四季祝日の花心得十一箇条」に上元(陰暦1月15日)、中元(陰暦7月15日)、下元(師走15日)の説明があります。 伝書では、始中終三元といいますが、中国での三元は上元1月15日(天官大帝)、中元7月15日(地官大帝)、下元10月15日(水官大帝)をその神の誕生日としています。 また、仏教では祖先の霊を供養する盂蘭盆会と中元が一体化して考えられるようになりました。盂蘭盆(うらぼん)の語源は恐ろしいもので、生前悪行を成した死者を逆さ吊りにすることを意味し、そこで無事成仏出来るようにとお参りし経を読み、孝行を成す事を盂蘭盆会(うらぼんえ)といいます。 日本では、目上の人やお世話になった人に贈り物をして無事の報告をしましたが、現代は贈り物をする習慣が徐々に無くなってきているようです。
<いけばなと三元> 上元には梅、柳、椿の三種をいけます。いけ方は、広口に三才の石を飾ります。天の石に小枝垂れの柳、人の石に椿、地の石に梅をいけます。椿は白玉椿、梅は白梅を使います。 梅は古木より若枝の伸びたものを使うことで、陽の定まる時候を移し見ます。 中元の花は、伐り竹に時候の花を応合い(あしらい)いけます。「一切の物生じてより三ヶ月目がその物の春」とする所からめでたい竹をいけます。適当な広口に真竹を2~3本いけて、初秋の花を横姿か半竪姿位で応合います。なお、五節句の七夕でもお話ししましたが、この時期は初秋と考え草花を選びます。 下元の花は、楪(ゆずりは)に万年青(おもと)、藪柑子(やぶこうじ)などを応合い、神に奉ずることから、花は陰極り陽を含みつつある時期であり、春神を祀る心にて挿けます。楪は家名相続の花でもいけますように、過ぎ行く年と新しく迎える年の双方に対して感謝の意と願の意を込めてすみやかなる年の流れを意識するものです。