1月は婚礼の花から、竹を取り上げました。今月は、節分の花や多くの祝事の花に使われています梅を取り上げます。
梅は、被子植物門双子葉植物網バラ科サクラ属ウメ種に分類される落葉高木で、外来種です。英名をJapanese apricot、別名に「好文木」(西暦280年頃、晋の武帝が学問に親しむと咲き、学問をやめると花が咲かなかったという故事にちなんで)、木の花、花の兄、春告草、匂草、香散見草、風待草、香栄草、初名草などがあります。日本での梅は、歴史も古く、弥生時代の山口、大阪、京都、奈良、東京に遺跡が見つかりました。稲作と同じように広がっていったようです。
中国南画の画材として一般的には松、竹、梅を「歳寒三友」と唱えていますが、梅、水仙、竹を「歳寒三友」と呼ばれている事もあります。冬の寒さに負けずに花を咲かせるとして吉祥の象徴とされ、京都御所紫宸殿の左近の桜に右近の橘は、左近の梅が最初であったようです。
村上天皇(在位946~967年)の時代、火災で梅の木が倒れ、紀貫之の娘が大切にしている梅を献上させたところ、
この娘は、勅なれば いともかしこし 鶯の 宿はととわば いかにこたえん
と別れの言葉を添えたところ、天皇は心を打たれて梅を返し、桜が植えられました。これが現在の「左近の桜、右近の橘」となったようです。この唱の言葉である鶯の宿が、景色でいう鴬宿梅の語源になりました。
なお、万葉集では花といえば梅でしたが、平安時代前期の古今和歌集では、花といえば桜を刺す様になりました。
花の魁として雪積もる中でも莟をほころばせて、見る人に美しさと同時に暖かさをも感じさせてくれます。端正で清楚な花の姿、芳ばしい香り、寒さに耐えさらに木の下部から梢に向かって開花が引き継がれていく生態が、代々家の継続する姿と重ね合わされるなど日本人の心情にぴったり合った花です。
≪いけばなと梅≫
当流いけばなにも欠く事の出来ない花材で、多くの景色を描写するいけ方があります。ある書には、梅をどのように感じ、表現するかについて、以下の一文があります。
「白梅の清しく淨らけき、紅梅のあでやかに美しき、そしてその香の高雅なこと、それは他の花には求め得られないものです。(…中略…)その枝の屈曲して変化極まりない風情を、線の上から見るとことごとく直線ですが、その無数の直線が集まって曲線をなしている所がこの木の特徴であり持ち味です。(以下略)」
実に的を得た説明になっているかと思います。
景色を挿ける場合その景色の意味を知る上で、漢字で書く事が望まれます。臥龍梅、凌雲梅、霞中梅、鴬宿梅、夜光梅、臨水梅、対水梅、観水梅、観月梅、林粧梅、懸崖の梅、雪中梅、護家の梅、藪の梅、月ヶ瀬の梅、菅公の梅 等々他にも多くあります。
臥龍梅一つ取り上げても、日本全国に多くあり、国指定天然記念物としての臥龍梅も多く、山口県余田の臥龍梅、宮崎県高岡町の月知梅、宮崎県新富町の湯の宮の座論梅、鹿児島県東郷町の藤川天神の臥龍梅などが挙げられます。折あれば、一度は見てみたいものです。
なお、私は宮崎の月知梅が好きです。特に雨の日が苔の雰囲気も良いものです。