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未生流東重甫

11月の節気:立冬と小雪


11月は、深まる秋を目で感じ、肌で感じ、音で感じ、匂いで感じ、舌で感じる時期であり、また、五感で感じる秋は人それぞれの味わいがあります。山々の景色の移りゆく色の賑わいと枯れ落ちる葉や、里の華々しく菊の競演、秋草の楚々とした美しさが気位高く咲く様、そして池には枯れた蓮が侘び寂を感じさせてくれる景色には事欠かない季節の盛りでもあります。春に賑々しく咲いた花々が実を結び、年越しの用意に余念がなく、もう少しでしばしの休息を取れると頑張っているのかもしれません。そんな景色の移りゆく様に今年も感謝です。 暦の上では、立冬や小雪と冬を感じる言葉が並びます。立冬を過ぎるとすぐに枯れ葉の季節。忙しく冬支度に追われる師走(しわす)もすぐにやってきますので風邪などひいてられません。冬眠する訳ではありませんが、秋には秋の味覚をしっかり堪能し、冬装備です。 <立冬(りっとう)> 立冬は、24節気の19番目、旧暦10月、亥の月の正節です。新暦11月8日頃で、今年は11月7日から11月21日までの15日間になります。天文学的には太陽が黄経225度の点を通過するときをいいます。四立(立春・立夏・立秋・立冬)の1つですので季節の節目になります。秋分と冬至の中間にあり、昼夜の長短で季節を区分する場合この日から立春の前日までが冬となり、当然11月7日から季語も冬になります。 立冬とは、これから冬に入る初めの節で、この頃は日の光も一段と弱く、陽射しも目立って弱くなります。北国からは山の初冠雪の便りが届くなど冬の気配がうかがえるようになりますが、実際はまだ秋らしい気配で紅葉の見ごろはまだ先です。 冬の季節風第一号が吹き始めるのもこの頃です。凩は木枯しとも書き、風が冷たく葉が落ち、木を枯らすという意味があります。また、時雨の季節でもあります。 暦便覧では、「冬の気立ち始めて、いよいよ冷ゆれば也」と説明しています。 立冬の本朝72候の初候として、山茶始開(つばき はじめて ひらく;山茶花が咲き始める)、次候として、地始凍(ち はじめて こおる;大地が凍り始める)、末候として、金盞香(きんせんか こうばし;水仙の花が咲く)があります。 <小雪(しょうせつ)> 小雪は、24節気の20番目、旧暦10月、亥の月の中気です。新暦11月23日頃で今年は11月22日から大雪の前日12月6日までの15日間になります。天文学的には太陽が黄経240度を通過するときをいいます。西洋占星術では、小雪を人馬宮(いて座)の始まりとします。 小雪とは、寒さもまだ厳しくなく、雪未だ大ならず、つまりわずかながら雪が降り始めるころの意味です。市街にはまだ本格的な降雪はないものの、遠い山嶺の頂きには白銀の雪が眺められ、冬の到来を事前に感じさせられる時節です。北風が木の葉を吹き飛ばし、青いみかんが黄色くなってきます。次第に冷え込みが厳しくなってきますので、冬の備えを整えましょう。暦便覧では、「冷ゆるが故に、雨も雪と成りてくだるが故也」と説明しています。ちなみに、小雪は天気予報などで使われる小雪(こゆき)とは異なります。こゆきは、1時間の降雨量が1mmに満たないことを意味しています。 小雪の本朝72候の初候として、虹蔵不見(にじ かくれて みえず;空に陽気もなくなり、虹も見かけなくなる)、次候として、朔風払葉(きたかぜ このはを はらう;北風が木の葉を払いのける)、末候として、橘始黄(たちばな はじめて きばむ;ようやく橘の葉が黄葉し始める)があります。 紅葉は、10月に北海道を赤や黄色に染め上げる紅葉前線は、立冬の11月上旬頃に本州青森に上陸、その後南下して東京の銀杏が黄葉するのが11月中旬頃、色は楓が紅葉するのが11月下旬になります。紅葉が始まるのは日最低気温が8度位から、5~6度で見ごろになります。そして落葉前に防寒対策完備の冬芽をしっかりつけて冬の休眠に入ります。落葉樹の一年は長いのか短いのかは不明ですが、気候に誠実である事は確かです。 11月の別名に、神楽月(かぐらづき)、霜降月(しもふりづき)、神帰月(かみきづき)、雪待月(ゆきまちづき)、建子月(けんしげつ)、霜見月(しもみづき)、天正月(てんしょうげつ)、竜潜月(りゅうせんげつ)、子月(ねづき)、達月(たつげつ)、暢月(ちょうげつ)、復月(ふくげつ)、陽復(ようふく)、辜月(こげつ)、霜月(しもつき)などがあります。 季語の中から植物に纏わる所から少し挙げてみます。茶の花、山茶花、柊の花、八手の花、帰り花、冬紅葉、落葉、枯葉、紅葉散る、銀杏落葉、柿落葉、木の葉、芭蕉忌、蕎麦刈、麦蒔き等があります。 時候の挨拶として、菊薫る~、晩秋の~、深秋の~、向寒の~、紅葉の~、暮秋の~、初霜の~、前寒の~、深冷の~、冷雨の~、落葉の~、残菊の~、初冬の~(~=候又はみぎり)、小春日和の好季、落ち葉舞う季節となりました、等があります。 秋の味覚に添えて、心和む一言は夜冷えの心身に暖かい贈り物です。思いある言葉も、哀愁に浸る言葉も、秋の食欲には勝てませんか。

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