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未生流東重甫

8月の節気:立秋と処暑


8月に入るとすぐ立秋を迎えます。暦のうえでは立秋から立冬の前日までが秋となり、いよいよ暑さのピークも過ぎて秋に迎える折り返し点になりますが、昨今の異常気象ともいえる暑さが続くこの時期はまだまだ夏真最中です。 8月といえば、京都では五山の送り火(大文字の送り火)があります。16日の送り火の日には嵐山の渡月橋の下手から精霊流し、灯篭のろうそくの火が暗い川面にちらちら浮かび出される様は送り火にふさわしい光景です。関西では8月15日が盂蘭盆会(うらぼんえ;父母や祖霊を供養し倒懸(とうけん;逆さに吊るされたような苦しみ)の苦を救うという行事)、そして8月16日が送り火となります。盂蘭盆会の日には、祖先の霊を供養する日とされています。 なお、祖先の霊を迎える日が13日の盆の入り(迎え盆)で、お盆提灯に火をともし、家の玄関先か門口で「迎え火」をたいて霊を迎えます。14・15日が盆中日でお墓参りをし、16日の送り盆でおがらや新盆の提灯を焼いて「送り火」をたいて先祖の霊の見送りをします。 現在でもお盆休みが里帰りの日としている人達が多くいらっしゃる事が嬉しく感じます。 <立秋(りっしゅう)> 立秋は、24節気の13番目であり、初めて秋の気配が現れてくる頃とされており、暦便覧では、「初めて秋の気立つがゆゑなれば也」としています。旧暦7月申の月の正節で、今年は新暦8月7日から処暑の前日である8月22日までにあたります。定気法では太陽が横径135度の点を通過するときをいいます。 立春から始まる24節気も立夏を過ぎ、夏の土用(大暑)も6日で終わりいよいよ後半に入りますが、暑さの真っただ中にある日になります。この日から旧暦のうえでは秋に入り、時候の挨拶も「残暑」となります。 実際には残暑とは名ばかりで、暑さいよいよ厳しく、立春から上り坂であった平均気温もピークに達します。しかし、風のそよぎ、雲の色や形に何とはなく秋の気配を感じられます。蜩(ひぐらし)が鳴き始め、場所によっては濃い霧が発生します。 立秋の72候の初候として、涼風至(りょうふう いたる;涼しい風が立ち始める)、次候として寒蟬鳴(かんせん(ひぐらし;秋に鳴く蝉) なく;蜩が鳴き始める)、末候として蒙霧升降(もうむ しょうこう;濃い霧がまとわりつく様に立ち込める)があります。 <処暑(しょしょ)> 処暑は、旧暦7月申の月の中気で、今年は新暦の8月23日から9月7日で白露の前日までの16日間をいいます。天文学的(定気法)的には、太陽が黄経150度を通過する頃であり、「暑さが止む」の意味から処暑といいます。西洋占星術では、処暑を処女宮(乙女座)の始まりとしているようです。 涼風が吹き渡る初秋の時節で、暑さもようやく収まり、綿の花が咲き、穀物が実り始め、収穫の候も目前となります。ただ、二百十日と並び台風襲来の特異日とされており、暴風雨に見舞われる事が少なくない日とされています。 何年か前までは、お盆も終わり夏休みも終わる頃に地蔵盆、広場や公園にやぐらを組んで提灯をたくさんぶら下げて賑やかに「あね さん ろっかく たこ にしき 祇園囃子がコンチキチン」「魔除け、厄除け、病除け・・・・」の音楽で盆踊りをしたものでs。 (この曲は日本三大祭りの祇園祭を詠ったもので、御池通りから四条通りまでの道を順に並べたもので御池、姉小路、六角、蛸薬師、錦、四条となり、この四条通りから祇園祭の鉾や山が巡行します。) 京都では22日頃と26日頃に地蔵盆を催されました。今でもたまに盆踊りのやぐらを目にしますが、今はどんな音楽で踊るのでしょうか。なのでしょうか。 処暑の72候の初候として、綿柎開(めんぷひらく;綿を包む萼(がく)が開き始める)、次候として天地始粛(てんちはじめてしじむ(しゅくす);ようやく暑さが鎮まる)、末候として禾乃登(か すなわち みのる;稲が実る)があります 処暑のうちに旧暦8月の雑説として、二百十日があります。立春の日から数えて二百十日目の日で、今年は新暦9月1日にあたります。二百二十日と共に台風が来襲する厄日として、風の害を防ぐための風祭(かざまつり)を行う風習があったようです。加えて、八朔(はっさく;旧暦8月1日)が同じ時期でもあることから、風祭を行っていた土地もあったとのことです。 未生流では、「四季祝い日の花心得十一箇条」として八朔が挙げられています。 「八朔には、何にても白き花を挿ける。秋の最中なれば、・・・・・・・」とあります。五行説、木火土金水にあてはめ、秋も白も金に含まれます。ちなみに、北原白秋の白秋の名もここから取ったとの説があります。 8月の別名には、葉月(はづき)、文月(ふみづき)、観月(かんげつ)、壮月(そうげつ)、竹春(ちくしゅん)、仲秋(ちゅうしゅう)、秋風月(あきかぜづき)、月見月(つきみつき)、建酉月(けんゆうげつ)、雁来月(かりきづき)、燕去月(つばめさりつき)、木染月(こそめづき)、紅染月(べにそめづき)などがあります。 季語も多く、花にまつわる言葉を挙げてみます。梶の葉、芙蓉、木槿、鳳仙花、朝顔、弁慶草、大文字草、韮の花、茗荷の花、蓼の花、水引の花、芭蕉、などがあげられます。この他、盆狂言、精霊流し、ひぐらし、線香花火等の様に季節の景色を感じさせてくれる言葉が嬉しいですね。 時候の挨拶として、暮夏、晩夏、残夏、残暑、季夏、残炎、葉月、桂月、秋風月、秋暑、処暑、初秋、早秋、仲秋、新涼、秋涼、金風の後に「~の候」や「~のみぎり」をつけて使います。 手紙の書きだしも余程残暑が厳しくなかったら、読んで安らぐ文にしたいものです。涼を感じたり、秋の風情を感じたり、金風のように青田の風では有りませんが、黄金に輝く稲穂の実りを爽やかに揺らせる風を感じたいものです。 書く人も読む人も心洗われる一文が「おもいやり」ですね。いけばなにも通じることですので大切にしたいものです。

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