24節気は、暦に気候の推移を示す24の基準点です。 旧暦では、冬至を計算の起点(0度)において1太陽年を24等分していたのに対し、新暦では、春分点を起点としています。 太陽が春分点を起点に再び春分点に達するまでを360度とし、これを24等分することで各節気を配置、1年間の気候の移り変わりを解り易くしました。 各節気の期間は約15日(うち5節気は16日)で、節と中が交互に並んでいます。 今年の立春は、全国的に季節外れの暖かい日が続いた後、各地に被害をもたらした大雪が毎週のように降るといった不順な気候ではありました。前回2月のコラムでもご説明しましたが暦の上では1年で1番冷え込む期間です。 やっと春らしくなる3月の24節気は、3月6日の啓蟄と3月21日の春分です。 <啓蟄(けいちつ)> 旧暦2月、卯の月の正節で、天文学的には太陽が黄経345度の点を通過する時を云います。今年は3月4日から春分の前の日3月20日までの期間をいいます。 この頃になると、大地が温まり、冬のあいだ土の中で冬籠りしていた虫が穴を啓(ひら)いて地上へはい出してくるという所から「啓蟄」と呼ばれます。とはいえ、実際はまだ寒く、虫がはい出るのはもう少し先になります。ちなみに、蟄は「ちゅう」の慣用読みで虫などが土中に隠れていることを意味しています。 また、この頃は春雷がひと際大きく鳴りやすい時期でもあり、昔の人々は冬籠りしていた虫が雷の音に驚いてはい出してくるのだろうと考え「虫出しの雷」と名付けたりもしたようです。 まだまだ寒い時期ではありますが、日も長くなり、日の光の中に春を強く感じるようになる頃です。なお、柳の若芽が芽吹き、ふきのとうの花が咲くのもこの頃です。 啓蟄の期間の72候には、初候として蟄中啓戸(ちっちゅう こを ひらく:冬籠りの虫が出てくる)次候に桃始笑(もも はじめて わらう:桃の花が咲き始める)、末候として菜虫化蝶(なむし ちょうと けす:青虫が羽化して紋白蝶になる)があります。 < 春分(しゅんぶん)> 旧暦2月、卯の月の中気であり、天文学的には太陽が春分点を通過した瞬間、すなわち黄経0度となったときで、今年は3月21日から清明の前の日4月4日までです。 太陽が真東から昇り真西に沈み、昼と夜の時間がほぼ等しくなり、この日を境にして昼がだんだん長く、夜が短くなります。また、春分の初日を春の彼岸の中日といい、祝日「春分の日」です。 この日からやっと本格的な春を迎えるに等しい気候になりますが、春分は二至二分の一つでその季節の中心にあり、その季節らしい時節となります。 なお、春分点は天球道で黄道と赤道が交わる2つの交点のうち太陽が赤道の南から北へ向かって横切る点のことで、赤経・黄経の原点となります。 春分の期間の72候は初候として雀始巣(すずめ はじめて すくう:雀が巣を構えはじめる)、次候に桜始開(さくら はじめて ひらく:桜の花が咲き始める)末候として雷乃発声(らい すなわち こえを はっす:遠くで雷の音がし始める)があります。 3月には、弥生(やよい)、花月(かげつ)、嘉月(かげつ)、花見月(はなみづき)、夢見月(ゆめみつき)、桜月(さくらづき)、暮春(ぼしゅん)、季春(きしゅん)、晩春(ばんしゅん)、建辰月(けんしんづき)、早花咲月(さはなさきつき)、蚕月(さんげつ)、宿月(しゅくげつ)、桃月(とうげつ)、春惜月(はるをしみつき)、雛月(ひいなつき)等の別名・異名があります。 季語も多く、特に植物のものが多いです。雛市、白酒、曲水、初雷、春雷、山笑う、水温む、水草生ふ、若鮎、鳥帰る、雲雀、燕、草の芽、苗床、木の芽等々数知れずあります。 時候の挨拶には春寒の候、春暖の候、孟春の候、春分の候、向春の候、水温む候、霞たちの候、弥生の候、春陽の候、霞立つ春、春光天地に満ちて快い季節、寒暖定まらないこの頃、花の便りも聞こえるこの頃、春雨に草木の芽も膨らむ今日この頃、春光うららかな日がつづき、野に陽炎のもえたつ季節が、三寒四温の季節、春風が心地好い季節になりました…等々挙げれば限がないほどです。 春を喜ぶ言葉は読む人も心地いいものですが、寒暖定まらないこの時期は体調を崩しがちです。しかしこの時期、旬菜のてんぷらは逸品ですね!
3月の節気:啓蟄と春分
未生流東重甫