いけばなに欠く事の出来ない花材であり、一般庶民にも関わりが大きい植物ということで梅を二月の花に選びました。 まず、少し学問的なことをご紹介します。
分類 バラ科 サクラ属 梅種
英名 Japanese apricot
梅の字 (あざな)梅・烏梅・汗米・宇米・有米・干梅
別名 好文木(こうぶんぼく)・春告草(はるつげぐさ)・木の花(このはな)・初名草(はつなぐさ)・香散見草(かざみぐさ)・風待草(かぜまちぐさ)・匂草(においぐさ)・いいなしのはな・かとりぐさ・かばえぐさ・つけぐさ・はっぱなぐさ・みどりのはな・むめ・木母。
江戸時代以降は「花見」といえば桜の花をさすのですが、奈良時代以前には花といえば梅をさすことが多く、梅より桜がより愛好され始めるのは平安時代中頃のことといわれています。万葉集においても、梅は118首よまれていて、歌の題材とした花木の中では第1位となっています。 花の種類別や実の種類別に並べても数多くありますが、実をつける梅(実梅)は、一般的に南高や豊後等が挙げられます。南高梅といえば馴染みのある方もいらっしゃると思います。 梅は食料としてだけでなく、薬用にも用いられますが、熟していない実(青梅)には毒性(アミグダリン)があるため、梅干や梅酒などにして食用とします。中国では紀元前から酸味料として使われており、塩をともに最古の調味料だとされています。日本語でも使われている良い味加減や調整を意味する「良い塩梅(あんばい)」とは、元々梅と塩の味加減がうまくいったことを示す言葉でした。このように、梅にまつわる事をお話しだしますと、非常に深いお話もありますので、今回はこのあたりにしておきましょう(笑) <いけばなと梅> 万葉集の歌に出てくるのと同じように、いけばなの伝書にも祝日の花として数多く出てきます。みなさまご存じの松竹梅として芽出度い花で正月三日にいける花でもあります。 梅は、祝日の花として他の花材と組み合わせていけられますが、独自の持つ味わいから多くの「景色挿け」として表現されています。 様々な流派が独自のいけ方をしますが、梅は枝花よりむしろ古木の味わいを表現するような説明が多いようです。 未生流では、次のような意味から「景色挿け」としての名が挙げられています。挿け方の説明はここでは割愛しますが、その名前から景色を想像してみてください。
南性の梅(客位)・北性の梅(主位)・臥龍梅(江戸本庄亀井戸村)・凌雲梅(雲貫梅)・臨水梅・対水梅・観水梅・観月梅・霞中梅・雪中梅・林粧梅・鴬宿梅・月ヶ瀬の梅(茶 菜種の産地)・菅公の梅(紅梅)・藪の梅・護家の梅(棟梅花護家)・懸崖の梅・夜光の梅・四君子(梅・竹・菊・蘭)・松竹梅・七五三の梅
上記の景色の特徴を上手くとらえ、表現することに留意します。 また、梅を表現するにあたり、こんな言葉があります。
貴稀不貴繁(稀(まれ)なるを貴(とうと)び、繁(しげ)きは貴からず) 貴老不貴嫩(老(おい)を貴び、若芽(わかめ)は貴からず) 貴瘠不貴肥(瘠(やせ)たるを貴び、肥(こ)えたるは貴からず) 貴蕾不貴開(蕾(つぼみ)を貴び、開きたるは貴からず)
梅の枝は直線の集合で、屈曲した枝が交差して出来る姿をとらえ「女画」(南画の技法)と称し特徴として表現します。未生流では、交差する枝は忌み嫌いますが、梅の場合は特徴の表現としてあえて交差させていけることがあります。 いけばなには規則、特にしてはならない事の説明がありますが、大切なのは「梅は梅らしく」表現する事です。その為にはいささかの技術が必要になります。日々研鑽ですね!