水仙は、ヒガンバナ科スイセン属(ナルシサス属)に属する植物で、原産地は地中海沿岸です。 ちちろ、ちちろっぱ、はるたま等、別名には面白い名があり、この他にも色々あります。 名前だけでなく、園芸品種についても1万品種以上もあり、品種改良などで現在も増え続けています。品種が多いことから、便宜上下記のように分類されています。 第1区分 ラッパ水仙 第2区分 大杯水仙(大カップ) 第3区分 小杯水仙(小カップ) 第4区分 八重咲き水仙 第7区分 ジョンキル系水仙(黄水仙:香りが強い) 第8区分 タゼッタ系水仙(房咲き水仙:日本水仙) 第13区分 植物学名によってのみ識別される水仙(野生種) 日本水仙は、「金盞銀台(きんせんぎんだい)」と呼ばれることもあり、これは、昔中国で、水仙の花の黄色いところを黄金の杯(金盞)に、まわりを囲む白い花弁を銀の台(銀台)にたとえて「金盞銀台(きんせんぎんだい)」と呼び習わしたことに由来しています。また、香りの強いことから、「金盞香(きんせんか)」という別称もあります。 上述の別称意外にも「雪中花(せっちゅうか)」という名前があり、これは雪の中でも整然と咲き、春の訪れを告げるところからついたと言われています。 名前の「水」から、火事などの火難を避ける意味で「移徙(わたまし)転居」の花として贈られたり、正月にもいける品格ある花として好んで使われたりと様々な用途で使われています。 未生流の伝書「体用相応の巻」の中の長葉十種いけ方の心得十箇条に、「四葉を一元*(いちげん)として花一本遣う。尤も(もっとも)三葉五葉の中より花を生ずと云えども甚だ稀なり。これによって一花四葉と定める」とあります。 水仙の出生**(しゅっしょう)の特徴として、真冬に咲くことの他に葉と花の球根から発芽し、4枚の葉が2枚ずつ向き合うように成長します。その中から花茎が冬は葉より短く、春には葉より高く伸ばして房状の花を咲かせます。 また、球根(春には土の上に顔を出す)から根元にかけて3枚程の筒状の白い根葉が冬は低く、春は高くまで着いてきますが、これを袴(はかま)と称し、格花をいける場合必ず使用します。これが水仙の単位である「一元(ひともと・いちげん)」と数えます。 葉は左回りにねじれて成長します。これは陰陽和合***を計るもので、大気の冷たさを陰としてとらえ、陽の姿である左回りで成長します。葉の表面は、白い粉をふいたような感じでこすると取れてしまいます。いける場合この粉をふいた状態を保つことも出生として必要なポイントです。 <いける時の注意> 葉の状態をしっかり観察し、頭の中で今日いける事の出来る水仙の花姿を描きます。葉の色が濃い方が強く、ため(曲げること)も効果的です。 *:水仙を数える時の「単位」。 **:植物が自然に生えている様。 ***:陰陽(いんよう)とは、古代中国の思想に端を発し、森羅万象、宇宙のありとあらゆる事物をさまざまな観点から陰(いん)と陽(よう)の二つに分類する範疇。陰と陽とは互いに対立する属性を持った二つの気であり、万物の生成消滅と言った変化はこの二気によって起こるとされる。