蔓梅擬は、ニシキ木科ツルウメモドキ属に属するつる性の樹木ですが、葉の形が梅に似ていることからこの名前が付きました。 5月頃に花が咲き、初夏には黄緑色の実がなりますが、秋になるとこの実が薄黄色に熟します。熟した後は皮の中から赤い種子が現れます。 この赤い実が美しく、蔓性の枝も趣があることから、秋冬のいけばなの花材としてだけでなく、ディスプレイの材料としても好んで使われています。 見た目の「美しさ」「優しい動きの枝」を感じられる蔓梅擬ですが、他の木に絡むように成長し、その木をおおってしまう等、自然においては中々逞しいようです。 いけばなの花材としては、蔓性の植物ですのであまり立ち昇る姿にいける事は有りませんが、まれにいけることもあったようです。 寄せ筒・重ね切りの1番高い所でいける花材としてこの季節には欠かせないものです。 使い方も楽しめる花材であり、例えば、1種でいける・出生の様に、他の木物に添わせていけるなど取り合わせを楽しむことも出来ます。 蔓のおもしろい動きが楽しめる伝書「体用相応の巻」から船三景の1つである「掛り船の景色綱花いけ方の心得」では、蔓梅擬が適材の1つに数えられています。 伝書「三才*の巻」の中にある「草木種々取り合わせいけの心得」では、枇杷(びわ)の体留(たいどめ)に添わせて蔓梅擬の用(よう)を使うとあります。ここでは、出生から他の木に絡む性質と、蔓梅擬の枝があまり強くない所から他の花材に添わせて使うという説明があります。 花会だけではなく、1度は通常のおけいこ等でふれてみたい花材です。 *:未生流における格花(古典花)のいけ方の基本。直角二等辺三角形の形を天・地・人のとし、天は体(たい)、地は用(よう)、地は(とめ)と呼ばれます。