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未生流東重甫

陰陽五行思想と華道(未生流)の関わり


表題:陰陽五行思想と華道(未生流)の関わり 日時:平成 24 年 5 月 24 日 18 時~ 於:ウィーン大学哲学科 本研修会は、未生流の三才についての著書を出版されているいけばなインターナショナルウィーン支部元会長エヴァ氏の要望で、ウィーン大学哲学部「東洋思想」のシンポジウムセミナーとして開催されました。実はウィーンにある大学では「東洋思想」を学ぶ人が非常に多いため、日本のいけばな文化やその土台となる思想に関心を持つ人が少なくなく、この研修会も哲学科の学生を中心に約 60 名の参加者が集まりました。

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大勢の参加者で教室が溢れるばかりの熱気に包まれる中、まずは哲学科の教授の講義で研修会はスタート。古代東洋哲学、宗教学にとどまらず中国思想や日本文化への流れ、そして今回のテーマである「陰陽五行思想と華道の関わり」についても丁寧にドイツ語で説明がなされ、その横では未生流メンバーによる栂・槇・薩摩杉・杜若による格花の実演が行われました。そして、続いてこの花姿に基づき「陰陽和合」「三才格の姿」「五行格の姿」などについて講師から説明がされました。

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次に講師による杜若を用いた実演が開始。この実演では、実際に参加者に杜若や花器等に直接触れてもらい、文字通り「肌で感じる」を体験していただきました。

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日本の伝統的ないけばなの繊細な動き、自然の中に存在する美しい草木を更に美しく表現するための手法や心配りを目の当たりにした参加者は興味津々でその一連の流れに見入っており、終盤は止めどもない質問の嵐となりました。中には外国の方から出たとは思えないほどの奥深い質問もあり、日本人として感心するほどであり、立ち見での参加を希望する人だけでなく、会場に入れない人が続出していたことからも、こちらが想定していた以上に東洋文化が西洋の人々を魅了するものであることを認識する良い機会となりました。 難しいテーマではありましたが、大きなインパクトを与え、心を捉えた研修会であったとレポートを書きながら思いをはせています。 最後に、今回の研修会にご協力いただいた関係者及び協力者の方々に厚く感謝申し上げます。 【参加者レポート①】 日本の華道というものにオーストリアの方々がどのように興味を示されているのか、不安が過る中研修会が行われました。夕方 6 時からの開催にも関わらず、教室は立ち見が出るほどの盛況ですぐに私たちの不安は一掃されました。(後程伺ったお話しによりますと、中にも入れずに諦めて帰られた人もいたそうです!) 60 名程が一つの部屋に押し詰めになったため、熱気が立ち込め呼吸するのも苦しい感じでしたが、参加者の方は私たちの一挙手一等足に興味津々で懸命に耳を傾け、目を見張って注目していました。参加者は老若男女様々でしたが、哲学科ということもあり男性が多かったかもしれません。 まず、花器(寸胴)や花材を見て、日本人がこれらをどのように使うのか、と参加者の方が首をのばしたり曲げたり覗き込むように見られているのが非常に印象深く残っています。栂、槇、薩摩杉と杜若を三名の先生方が生け込みをされる中、東先生の陰陽五行の説明がありました。 「どうして木や花をあのように曲げるのか」と疑問に思っているようだった参加者の方たちも、先生の説明が進むにつれ納得されているようでした。きっと、形は陰陽そして地球に存在する木火土金水や季節、究極には天人地宇宙を表す形態だと理解されていったからでしょう。 哲学科の教授は、古代の宗教を専門に研究されていることもあり、景教から始まり仏教・儒教を吸収し日本にたどりついた時に三位一体の三角形の形を陰陽五行と組み合わせ、それに自然信仰が合体し自然界の草木を用いて形を造り、美を見せる日本文化と、神の花であったものを庶民の手の届く場所で愛でることを可能にした未生流を称賛していただきましたが、これ花は束ねて愛でるものであるという感覚と、日本の華道の奥深さの違いを少しは知って頂けたということだと思います。技術面では、東先生が杜若を何気ない態で生けていらっしゃる間に、杜若の葉を参加者の方々に触って曲げることを“体験”していただき、いかに繊細な作業であるかを知る機会を設けました。花や木をいじめているのではなく、繊細な心で、花を美しく整え、見せているということも理解いただけた様子でした。 質問もたくさんあり、時間終了後も立ち去るのが惜しいかのように生けあがった花々を鑑賞される方が多かったのも印象的でした。 異文化の方に日本の文化を伝えてみて、私たちはいかに素晴らしい華道の教えを受けていたのかを改めて知ることができた研修会でした。 【参加者レポート②】 2012 年 5 月 24 日にウィーン大学の教授、学生さん、いけばなインターナショナルの方々の参加にて東重甫先生より「陰陽五行といけばな」について詳しく講義していただきました。 まず、社中 3 名による三才格、五行格、二重いけをいけさせていただき、陰陽和合の踏まえてこの 3つの姿を実演しました。また、寸渡(格花をいける花器)の寸法は五大(空、風、火、水、地)より作られる等といった細かいところまで説明がありました。この後、参加者の方々に実際に杜若の葉に触れていただき、先生と同じてつきで葉をためる(=歪める)人たち。あちこちで笑顔が溢れ、とても楽しそうな光景が今でも目に焼き付いています。そして垂撥に杜若を鮮やかな手捌きでいけていく東先生の姿を食い入るように見ておられました。 質問の時間では、日本の人たちでも思いつかないような奥深い質問が多く、東洋の思想や生け花に関して一時間以上に及ぶものでした。海外では、自分には合わない講義であると即退室や中座する人がいることを事前に聞いていましたが、参加者全員が最後まで熱心に聞いておられ、日本人としても嬉しく思っております。また、会場の広さの関係で、入室できずに帰られた方が何人かいらしたのは非常に残念に思っております。 初めて海外でこの様な素晴らしい会に参加させていただき、改めて東先生の元でご指導いただいていますことに深く感謝し、ますます精進して参りたいと決意を新たに出来たことに感激しております。

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