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  • 未生流東重甫

「華道玄解」 荒木白鳳著 閲覧27 

「華道玄解」荒木白鳳著 閲覧27 2022年7月のコラム

今年は久し振りに夏の京都の風物でもある祇園祭が開催されるようです。京都に住んでいると当たり前のような光景も、遠くの人には魅力のある祭りの1つだそうです。確かに「コンコンチキチン コンチキチン」とお囃子が流れると、懐かしくお祭り気分に浸れます。例年であれば宵々山、宵山と街中が人であふれるのですが、今年はどんな規模で催されるかは解りません。


随分前になりますが、「京都の三大祭りと花」と題してコラムを書きました。京都三大祭りとは、祇園祭、葵祭の二大祭に10月の時代祭を加えたものです。

祇園祭は、京都祇園の八坂神社の祭りで、868年に疫病退散を祈願して66基の神輿と共に神泉苑に送ったのが初めとされています。長刀鉾を筆頭に縄だけで組まれた大きな鉾を始め多くの鉾や山が各道筋で巡行の出番を待ちます。ニュースなどで取り上げられるのが祭りの終盤の巡行なので知らない人もいらっしゃると思いますが、祇園祭は7月1日から31日まで1ヶ月間あります。先述の通り、クライマックスが17日の前祭で、巡行が賑やかに行われます。また、最近では24日の後祭りと称される祭りも復活して定着しています。

祇園祭の期間中、室町筋では格子戸を外し屏風など立派なものを並べます。また、祭とは切っても切れない「扇」ですので、その横には祭にちなんだ名前の桧扇(ひおうぎ)が挿けて置かれます。町を歩く人達の視線に入っているかどうか解りませんが、今の時代にもまだ夏の風物詩がお祭りを賑わしています。このように当時を思い出しながら書いていますと、宵山に行って夕立に遭って慌てたことを思い出します。


さて、7月は夏の真っ只中。この夏をいかに楽しく過ごそうかと思案されて居られる方も多いかと思います。あまり自由に動けないのが現状ですが、幼稚園児から中学生ぐらいまでは親の責任の元、思い出作りの手助けが必要です。ご時勢柄、難しいことかも知れませんが何か1つでも思い出作りが出来れば良いと思います。


我々挿花に携わる者にとって、循環して止まない1年の流れの中で、季節に活きる草木を見逃すことは出来ません。季節に違わず咲く花は美しい。早春から春・夏・秋・冬と時節の流れとともに、景色に見る草木や、花店の店先を賑わす草木の変化をどのように感じ見ているのかを自身に問いかけることがあります。

1年頑張って稽古したとしても、週1回程度であれば1年間で50回あるかないかの稽古となりますので、多くの草木がある中で限られた花材での稽古、となります。「花を挿ける」とは、形をいけるだけではないと繰り返していますが、形にいけることがままならない状態ではこれまたいけばなとは程遠いものになってしまいます。つまり、形をしっかり学びながら「いけばなとは」を考える必要があり、これはあくまで人間道であり、すぐに身に付くようなものでもありません。

 紀元前5百年頃、孔子は次のように諭しています。

「止りさえしなければ どんなにゆっくりでも進めばよい」


そして

「何事も楽しんでやりなさい 楽しんでやることで 思わぬ力が発揮されるものだ」 

なにやら救われた思いがするのは私だけでしょうか。

花を挿けたい、慈しみたいと思う心をいけばなに託したいと改めて感じます。

 さて、先月のコラムでは、「華道玄解」 閲覧として『養の巻參考資料』の「人類養の基礎」を読み進めましたが、少し長くなりますのでその途中で終わりましたので今月はその続きを読み進めていきます。

“本來此土地は萬物共住の處なり。更らに善悪の別なし分に應じて、自然定むる所なり。故

に自然の命に随って此地に處す。家宅は風雨を凌げば足る。衣は是寒暑を防ぐの要品。世相は自然の時なり。更らに善悪の相ある事なし。善悪の世風さらに、己れに關せずと悟了す。善世は人類墜落の基因。惡世は覚醒の基因と悟了す。故に如何なる惡世の災害に遇ふとも。惡相の地に處すとも。悪相の家宅に住すとも、是れ自然の時とし。自然の命と忍受して、更らに愁苦ある事なし。是れ古への聖賢皆如是なり。然れども此の如きも、幾多の修行を重ねて悟了する者にして、常人の爲し得ざる所。凡人の及ばざる業なり。

常人の本道は前項に記す五行の分類中の、五常の中核たる信の一事先づ法則として、人倫の軌道の眞中たる意識の運用を定め。修練して精神の顚倒なからしめ。自然の教へに順應して世に處し。他と和順して前進する事人類養成の基礎とす。是れ人類の表道なり順道なり本道たる處なり。

此の軌道に倚る時は必ず自然の祐け有りて完全なる人種たる事を得ると信ずべし。自然に違法なしと信ずべし。自然は必ず汝の体を健全ならしむべし。神佛は必ず汝の誠意を感應して識力を授くべし。

人類の個身の力は弱きものと知るべし。我意の惡識ほ賴み難きと知るべし。和合心を以つて人類向上の基礎たる事を考究すべきなり。

故に華道は即ち人倫の正道自然の教に順應するを以つて萬物養の法と定め人類養育の法とする者也。


いかがでしょうか。

次回は華道玄解『養の巻參考資料』から『生物養の素因と助成物』を読み進めます。いよいよ原一旋轉も読み終えますが、何か心に残った事がありますでしょうか。一度読んで身に付くほど簡単な事ではありませんし、次代の相違を感じるところもあります。しかし、この内容の中には、読んで下さる皆様を始め、いけばなに携わる方すべてに、少しでも形ではなく心を感じて頂き、いけばなを教えるための糧になればと説かれた思いが伺われます。

一度ではなく、二度、三度と繰り返しと読みながら、今のいけばなの在り方を考えて頂ければ幸せです。

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